宇宙航空環境医学 Vol. 62, No. 1, 7, 2025

特別講演

航空輸送の持続的発展を支える人材確保の取組について

藤林 健太郎

国土交通省航空局安全部安全政策課乗員政策室

Personnel Licensing Policy Office, Flight Standards Division, Aviation Safety and Security Department, Japan Civil Aviation Bureau(JCAB), Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism (MLIT)

Kentaro Fujibayashi

Executive Director, Japan Aeromedical Research Center

1. 航空を取り巻く現状
 航空輸送は,これまでリーマンショックや東日本大震災など,外部イベントの発生毎に一時的な落ち込みを経験してきたが,中長期的には,継続的に発展してきた。
 新型コロナウイルス感染症の影響による全国的・世界的な行動制限等に起因する旅客数の減少は,これまで経験したことのない規模であったが,その後着実に回復しているところであり,今後も航空需要は増加を続ける見込み。
 また,近年,いわゆる「空飛ぶクルマ」と呼ばれる,新しい形態の航空機が登場してきている。アーバンエアモビリティとも呼ばれる,次世代型の航空機は,都市部での送迎サービスのほか,離島や山間部での移動手段,災害時の救急搬送など,新たなマーケットでの活用も期待される。
 2. 航空整備士・操縦士の人材確保策
 一方,生産年齢人口の減少等を背景として,国内の多くの業界において人材不足の問題が顕在化しており,航空業界においても人材の確保が重要な課題となっている。
 航空需要の増加を支えるためには,航空機の安全運航を支える要である航空整備士・操縦士の十分な確保・養成が必要。
 問題が顕在化する前に対策を講じることが重要であり,国土交通省では,本年2月に有識者検討会を新たに設置し,今後の航空整備士と操縦士の人材確保・活用のあり方について検討を進めているところ。
 検討会では,ヒアリング等を通じて明らかになった課題について,安全確保を大前提に,国際的なルールとの整合性に留意しつつ,必要な人材確保や活用策等の取組みに関する議論を行い,本年6月に,それぞれの方向性について中間とりまとめを行ったところであり,その内容について概説する。
 3. 航空医学分野の取組み
 操縦士については,航空身体検査証明制度により医学適性を定期的に検査・証明されている。当該制度やその基準・運用について概説する。
 また,操縦士の年齢上限やその引上げに係る経緯等を参照し,航空医学分野における検討成果が人材の確保や安全運航において果たしてきた役割に着目するとともに,最近の航空医学分野の規制等に関する検討状況について紹介する。