宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 44, 2024

学生演題 2

B2-4. 間欠的な高二酸化炭素分圧環境への曝露が骨格筋細胞の成長に及ぼす影響

横田 裕平1,小寺 紫雲1,櫻井 隆太郎1,鈴木 星矢1,山下 創大1,山本 竜矢1,大橋 和也1
萩原 ありさ1,後藤 勝正1,2

1豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科
2豊橋創造大学大学院健康科学研究科

Intermitted exposure to high PCO2 stimulates myotube formation of C2C12 cells

Yuhei Yokota1, Shiun Kodera1, Ryutaro Sakurai1, Seiya Sakurai1, Sota Yamashita1, Tatsuya Yamamoto1,
Kazuya Ohashi1, Arisa Hagiwara1, Katsumasa Goto1,2

1Laboratory of Physiology, School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University
2Department of Physiology, Graduate School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University

骨格筋の肥大は,骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞が中心的な役割を担う。筋衛星細胞は,運動等の刺激によって活性化し増殖する。増殖した筋衛星細胞は,筋芽細胞へ分化し既存の筋線維へ融合することで筋肥大が生じると考えられている。しかし,筋力トレーニングなどの運動刺激が骨格筋肥大を引き起こす分子機序には不明な点が多く,その全貌は未解明である。一般に,筋力トレーニング時には,筋内圧が上昇して筋内毛細血管が圧迫されるために,間欠的な筋血流の減少が生じる。そのため,エネルギー代謝が亢進している骨格筋細胞近傍におけるPCO2は上昇することが予想される。したがって,間欠的な高PCO2環境への曝露は,骨格筋肥大の1つの要因である可能性が示唆される。一方で,持続的な血中PCO2上昇を認める慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では骨格筋は萎縮する。この骨格筋萎縮は,持続的な高PCO2環境曝露による筋衛星細胞の増殖と分化の抑制に起因すると考えられている。しかし,間欠的な高PCO2環境への曝露が骨格筋細胞に及ぼす影響は不明である。そこで本研究では,間欠的な高CO2環境への曝露が骨格筋細胞の成長に及ぼす影響を検討した。実験には,マウス筋芽細胞由来細胞株C2C12細胞を用いた。高PCO2環境はCO2インキュベーターのCO2濃度で調整し,10% CO2を高PCO2環境,5%を通常環境とした。実験条件は,通常環境で培養した対照群,分化誘導後1回のみ1時間高PCO2環境に曝露した高PCO2群A,分化誘導後1日1時間高PCO2環境に曝露した高PCO2群B,分化誘導後常時高PCO2環境に曝露した高PCO2群Cとし,分化誘導4日後に細胞増殖ならびに筋細胞への分化能を評価した。EdU(5-ethynyl-2′-deoxyuridine)の細胞への取り込みにより細胞増殖を評価したところ,分化誘導後48時間におけるEdU陽性細胞の割合は,高PCO2群Cがその他3群と比較し有意に高値を示した。また,筋分化指標のmyogenin陽性細胞の割合および分化指数および融合指数によって筋分化能を評価したところ,分化誘導96時間におけるmyogenin陽性細胞の割合について,高PCO2群Cは最も低値を示し,高PCO2群Bと比較し有意差が認められた。一方で,分化指数と融合指数については各群間で有意差は認められなかった。しかし,ミオシン重鎖発現細胞の発現率は,高PCO2群AおよびC群は他の2群に比べて高値を示した。以上より,高PCO2環境はC2C12の増殖ならびに筋分化を促進する作用を持つことが示された。したがって,高PCO2環境は骨格筋量を増加させる刺激として有用性であると考えられた。一方で,特定の高PCO2群条件では,これらの作用は必ずしも認められないことから,筋細胞の成長を促す高PCO2環境には一定の条件が必要であることもあわせて示唆された。本研究の一部は日本学術振興会科学研究費(18H03160, 19K22825, 19KK0254, 22H03474, 22K19722, 22H03319, 22K18413),公益財団法人大幸財団「自然科学系研究助成」,豊橋創造大学大学院健康科学研究科「先端研究」,豊橋創造大学「学内研究助成費」の助成を受けて実施された。