宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 42, 2024
学生演題 2
B2-2. COVID-19 パンデミック期間中の国際渡航時に必要な検査の変遷
楯 和馬1,2,3,有里 勇輝2,竹口 優三2,3,三宅 将生3,挾間 章博3
1福島県立医科大学・医学部・医学科学部学生
2医療法人社団ベスリ会東京TMSクリニック
3福島県立医科大学・医学部・細胞統合生理学講座
The Evolution of Required Tests for International Travel During the COVID-19 Pandemic
Kazuma Tate1,2,3, Yuki Arisato2, Yuzo Takeguchi2,3, Masao Miyake 3, Akihiro Hazama3
1 Fukushima Medical University School of Medicine
2Medical Corporation BESLI-Kai Tokyo TMS clinic
3Department of Cellular and Integrative Physiology, Fukushima Medical University School of Medicine
【背景】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異,ワクチン接種率向上,重症化率の低下等を背景とした感染症分類の5類移行にみられるように,渡航規制が次第に緩和されている。渡航前のPCR検査や抗原検査による陰性証明,ワクチンの接種証明により渡航可能な国が次第に増加してきた。しかし国ごとに証明の要件が異なっていた。日本国内の医療機関が「コロナ対応」で逼迫している中,海外渡航実現のための体制を構築し,実際に検査を行う中で見出した点を報告する。
【方法】 都内事業所で採取された検体を院内にて検査を行い,結果を判定して,国ごとに定められた形式で渡航用陰性証明を発行した。また,2022年の1年間において中国向け渡航検査では現地入国時にも重ねて検査が行われた。そして,その結果が当院にも通知されたことから,中国向け渡航検査を詳細に解析して当院の検査体制の評価を行った。
【結果】 2020年12月から渡航者向けの検査を開始し,累計40,000件以上の検査を行った。検体は鼻咽頭拭い液,唾液などを対面にて採取した。検査手法(PCR検査や抗原検査など)や判断基準は国によって異なっていた。ただ,社会環境の変化とともに,国ごとの手法や基準は変化していった。また,フライト前検査に時間要件が存在していた国もあり,検査及び証明書発行にかかる時間を鑑みて検体採取と結果通知の時間を決定した。中国向け渡航検査において,陰性証明を発行したものの,渡航後の検査で陽性と判定された方もいた。こうした方は現地にて隔離対応の後に入国しなければいけなかった。一方で,当院としても1検体に対して2連以上で検査するなどの工夫を行い,渡航後の検査で陽性と判定される事例の減少に努めた。単一検査を行った2022年1月1日から9月14日の256日間における中国渡航者向けの全検査数が6,253件,内陽性者数が99名,証明書発行件数が6,154件,渡航後陽性者数が3名であった(渡航後陽性率約0.05%:国内全検査陽性率約35.9%)。他方で2連以上検査を行った2022年9月15日から2023年1月17日の114日間における全検査数は11,834件,内陽性者数が606名,証明書発行件数が11,228件,渡航後陽性者数が7名であった(渡航後陽性率約0.06%:国内全検査陽性率約67.1%)。また,real time RT-qPCRにて算出されたCt値のみでは陰性と判定するには疑わしい場合,再度来院していただき検査を行った。
【考察】 渡航先の国ごとに検体採取や検査の方法,判断基準や様式などが異なっており,かつ基準の変化への対応を余儀なくされた。検査試薬,証明書の仕様,渡航希望者への応対などを主体的に変更していく必要があった。渡航用陰性証明の発行後に陽性と判明する可能性について,① 検査後の抗原への暴露,② 感染しているが検出限界以下,③ 見逃し例の3パターンがあると考えた。① ② は防ぎ得ないが,③ については市中陽性率に依存して件数が増減し得る。2連以上の検査を行ったことで,市中感染率が高い時期にも関わらず渡航後陽性率は大きく変化しなかったのかもしれない。このように検査フローを見直すことで検査機関の能力を改善できるのではないか。