宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 36, 2024
学生演題 1
B1-2. 模擬微小重力下のヒト臍帯静脈内皮細胞におけるフォン・ヴィレブランド因子に関する機能形態変化の解析
中山 大河1,2,南沢 享2,暮地 本宙己2
1 東京慈恵会医科大学医学部医学科3年
2 東京慈恵会医科大学細胞生理学講座宇宙航空医学研究室
Analysis of the ultrastructural characteristics and molecular localization of human umbilical vein endothelial cells related to von Willebrand factor under microgravity
Taiga Nakayama1,2, Susumu Minamisawa2, Hiroki Bochimoto2
1 3rd-Year Medical Student of The Jikei University School of Medicine
2Division of Aerospace Medicine, Department of Cell Physiology, The Jikei University School of Medicine
最近,宇宙滞在中の微小重力を原因とする血栓形成リスクが報告されている。フォン・ヴィレブランド因子(vWF)は,一次止血の初期段階において血小板の凝集に寄与することが知られ,血中vWFの高値が血栓形成のリスクになることが近年指摘されている。
発表者は,宇宙空間における重力性の機械的刺激の異常が,血管内皮細胞の機能障害や表面微細構造変化を惹起することに着目した。そして,血管内皮細胞モデルであるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の重力応答性に関する形態学的解析を実施した。地上対照群に加えて,3Dクリノスタットによる模擬微小重力下(SMG群)でHUVECを48時間培養した。
Trizol処理後,RNAを抽出し,vWFについてq-PCRを実施した。また,4%PFAで固定後,細胞数を計測し,vWFの蛍光免疫標識を行い共焦点顕微鏡で観察した。加えて,2%glutaraldehydeで固定後,凍結乾燥・オスミウムコーティングして走査電子顕微鏡で観察した。
q-PCRでは,vWFの遺伝子発現はSMG群で上昇する傾向にあった。細胞数計測の結果,対照群に比べてSMG群で有意な減少を認めた。共焦点顕微鏡観察では,vWFとゴルジ体マーカーであるGM130の共局在率が,地上対象群に比べてSMG群で低下する傾向が見られた。走査電顕観察では,細胞表面に,絨毛構造と黒い斑点構造が観察された。
以上から,模擬微小重力は,vWFの遺伝子発現や分泌能をはじめとした細胞機能変化を誘発し,細胞表面の微細構造変化も生じさせる可能性が示された。今後は,これらの変化がどのように血栓形成に影響するかについても検討したい。