宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 29, 2024
一般演題 4
1. 終末糖化産物AGEsによるマウス骨格筋細胞膜脆弱化の誘導
江川 達郎1,趙 海宇1 ,後藤 勝正2,林 達也1
1京都大学大学院人間・環境学研究科
2豊橋創造大学大学院健康科学研究科
Weakening of mouse skeletal muscle cell membrane by advanced glycation end products
Tatsuro Egawa1, Haiyu Zhao1, Katsumasa Goto2, Tatsuya Hayashi1
1Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
2Graduate School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University
【背景】 糖化ストレスは,タンパク質の糖化反応に伴う終末糖化産物(AGEs)の形成と蓄積を特徴とし,近年,宇宙フライトによる身体機能の低下に関与することが示唆されている。また糖化ストレスは骨格筋退行作用(筋萎縮,筋収縮力低下誘導)を有することが示されているが,その根底にある分子メカニズムは完全には解明されていない。本研究では,骨格筋への機械的負荷を増大させたマウスにおいて,糖化ストレスが骨格筋適応に与える影響について明らかにすることを目的とした。
【方法】 雄性C57BL/6NCrマウスを牛血清アルブミン(BSA)投与群とAGEs投与群に無作為に分けた。AGEs投与群にはAGEs(0.5 mg/g)を1日1回腹腔内投与し,BSA投与群には同量のBSA(0.5 mg/g)を投与した。7日間の連続投与後,各群の右脚の協働筋腱切除により足底筋への機能的過負荷を7日間行った。また培養細胞を用いた検討では,C2C12筋細胞にAGEs(1 mg/mL)を負荷して,細胞接着と細胞膜透過性を検討した。
【結果】 AGEs持続投与により血漿中AGEs濃度はBSA投与群の約2倍まで上昇した。足底筋重量,筋線維断面積,タンパク質合成,筋核数は両群とも機能的過負荷により増加したが,AGEs投与によりその増加は有意に抑制された。AGsE投与を行った一部のマウスの筋細胞は,機能的過負荷により崩壊が確認された。AGEsによる筋肥大抑制と筋細胞崩壊のメカニズムを探るためにプロテオーム解析を行ったところ,細胞接着に関与するタンパク質群が同定された。この結果と一致して,ジストロフィン-糖タンパク質複合体タンパク質と細胞接着関連タンパク質は,機能的過負荷に伴って増加するが,AGEs投与によって抑制された。さらに,C2C12筋細胞をAGEsで処理すると,接着能力が阻害され,細胞膜透過性が増加した。
【結論】 本研究は,糖化ストレスが細胞膜脆弱化を引き起こし,筋肉量の増加を妨げることによって,筋機能低下を誘導する可能性を示している。