宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 9, 2024

学生セッション

S3-3. 宇宙医学×宇宙法─宇宙での有害事象の可能性と法律の必要性─

服部 優奈

慶應義塾大学医学部医学科

Space Medicine×Space law─The risk of adverse events in space and the necessity of law─

Yuna Hattori

Keio University School of Medicine

今回着目したのは宇宙法である。近年,宇宙医学のみならず宇宙関連事業が大きく発展する中で,サブオービタル飛行をはじめ宇宙旅行がすでに実現している。近い将来,低軌道上や月,火星での長期間滞在の可能性も示唆されているが,人類が宇宙という未知の世界で生活を営むには秩序を保つための規則が必要不可欠である。宇宙条約,救助返還協定,宇宙損害責任条約といった国際的な法律を中心に宇宙法が現在存在するが,宇宙医学に直接関連した法律は未だ存在しない。さらに国内宇宙法は整備されていない曖昧な箇所が多い点が問題視されている。そこで本発表では,宇宙法・宇宙医学界の双方の専門家の意見を参考にしながら,将来的に起こりうる臨床関連のリスクを法律的側面から評価するという先進的な議論を行うこと,さらに宇宙医学と宇宙法を結び付けることへ対する関心を高めることを目的とする。

 本発表に際し,宇宙法の変遷と現状について確認をしたのち,予防・早期発見・治療という3つのセクションに分け,実際に想定される有害事象とそれに対して導入すべきシステムを挙げる。その後,法的根拠に基づいて,システムの妥当性や解決策,新たな問題点について議論する。最後に地球と比較して宇宙で臨床を行うリスクや有人宇宙の実現の可能性,そして将来に向けて医学と法律を関連付けて考察する重要性について評価する。