宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 2, 109-111, 2023

ニュースレター

(3)第68回大会に参加して

平嶺和佳菜

東京理科大学 薬学部薬学科 4年

この度は,このような場に寄稿をさせていただく機会をいただき,誠にありがとうございます。学会に参加させていただきました,東京理科大学の平嶺和佳菜と申します。
 私は前回の 67 回大会から参加させていただき,毎回多くの刺激をいただいております。私の専門は薬学で,放射線生命科学の研究室に所属しています。宇宙航空医学学会では幅広い分野で様々な専門の先生方のお話を聴講することができるため,自分の専門にとらわれず多角的な視野で物事を考えることができるようになると考えております。
 今回の大会では日本国内にとどまらず,世界各国から先生方がご講演くださいました。このようなご講演のおかげで,宇宙医学の世界の最先端のお話を聞くことができました。その中でも印象深かったのは NASA の Ajitkumar Mulavara 先生のご講演です。Mulavara 先生のご講演では重力と放射線,精神的ストレスなど宇宙飛行を通して起こりうるストレスからどのような変化が起こってくるのかについて学びました。私は,皮膚細胞における放射線と重力の細胞から出るシグナル変化について研究をしております。このことから,宇宙飛行における皮膚へのトラブル事例があるのか,がんになった事例などはあるのかについて質問もさせていただきました。
 また,明石市立市民病院の長谷川達央先生の南極での医療についてのご講演についても深い興味を持ちました。聴講する前は南極の医療と宇宙医学は無縁であると考えていました。しかし極地での医療を行う環境で,物資がすぐに届かない面や少人数で長期間過ごすことがストレスになるという精神的な面で実際には深い関係があることを感じました。さらにこちらの講演では宇宙医学と南極での医療の相違点だけでなく,南極での実用的な医療を学ぶことができました。南極ならではの環境であるブリザードやアザラシへの対処法など南極に行ったからこその興味深いお話があり,地球環境への興味も沸きました。
 特別講演として元宇宙飛行士の向井千秋先生が登壇されました。さらに聴講者として金井宇宙飛行士もいらっしゃいました。宇宙飛行士を目指す私にとって,宇宙飛行士の方々とお話をする機会があることで将来への大きな励みになりました。
 学生同士での交流も非常に大きな刺激となりました。医学部の学生が多い中で私と同じ薬学部の学生もおり,今後の宇宙医学と薬学の関係やどのようなことをやっていきたいのかについて語り合えた時間は有意義でした。今後自分の研究も磨きをかけ発表できるよう努めてまいります。
 最後となりますが,貴重な経験を与えてくださいました大会長,野村泰之先生をはじめ学会関係者の皆様に厚くお礼申し上げます。


黒松 俊吾

大阪公立大学 医学部 4年

この度はこのような場に寄稿させていただく機会を賜り,誠にありがとうございます。私は前回第 67回大会にて,オンラインでの学会発表という形で参加させていただきました。ですので,今回が初めての現地での参加となりました。私の所属する,Space Medicine Japan Youth Community(以下SMJYC)で学生セッションと称しまして,お時間をいただきました。私は冒頭の学生発表部分に関して,座長を務めさせていただきました。SMJYCでは,宇宙医学に関する様々な活動を行なっております。その中で,学生が主体となって研究活動を行なっており,その発表の一部をこのセッションの中で行わせていただきました。世界を見渡しても,ここまで学生の発表に時間を割いていただける学会は珍しいと思うとともに,ご協力いただいている学会員の先生方に感謝申し上げます。
 さて,私個人としましては,2日間の学会の中で様々な先生方とお話しさせていただきました。先ほども触れましたが,先生方と学生の距離が近いことはこの学会の大きな魅力です。オンラインでお話を伺った先生とも,実際に対面でお会いすると,一歩踏み込んだお話が伺えて,対面でのコミュニケーションの重要性を再確認いたしました。また,私はアカデミックな領域だけでなく,ビジネス領域にも非常に関心がありますため,普段あまり関わりのない,航空宇宙領域の企業によるプレゼンテーションやブースでの展示は大変勉強になりました。今回のご縁を通じて,個人としての成長はもちろん,SMJYCとしても大きな飛躍に繋げられるよう,今後も尽力して参ります。
 SMJYCの活動を簡単にではございますがご紹介させてください。宇宙医学に関する講義を先生方から頂くマンスリーウェビナー,宇宙医学に関する論文を扱う論文抄読会,宇宙医学に関する施設を見学するスタディツアー,そして学会への参加,これらが現在定期的に行なっている活動となります。日々先生方の多大なるご協力をいただいております。この場を借りまして感謝申し上げます。また今後ともこの活動を継続できるよう,何卒ご助力いただければと思います。この団体を運営する一人として,一度原点に立ち返り,改めて宇宙医学という学問を志す若者を増やしていくことに貢献したいと思っております。今後来る宇宙が身近になる世界に向けて,SMJYCの若者と,アカデミアの先生方の力を融合させて盛り上げていきたいと思っております。
 また,個人としましては,ビジネスの力を用いて宇宙医学業界に寄与したいと考えております。アカデミックな知識,技術と,ビジネスの力を繋ぎ,宇宙を人類の新たな居住地とすることが私の夢です。先達の先生方には何卒ご指導ご鞭撻いただけますと幸いです。
 最後になりますが,大会長の野村先生を始めとして,大会の実施にご尽力いただいた皆様,誠にありがとうございました。


斉藤 良佳

京都大学 医学部 5年

宇宙医学を学ぶ学生団体 Space Medicine Japan Youth Community(SMJYC)運営の斉藤良佳と申します。今回の第 68 回宇宙航空環境医学会大会において,私は学会前日のオンライン交流会の開催,自身が運営として携わっている SMJYCの活動報告,宇宙医学とジェンダーについての口頭発表,そして SMJYCのポスター展示をさせていただきました。
 こうした様々な経験を通じて最も感じたのは,大会の場で学問が進んでいくという実感,そして参加者自身が大会を盛り上げることの重要性です。私は昨年の大会にも参加しましたが,当時は発表を聞き最新の知見が学べれば十分だと考えており,先生方のご講演を拝聴することに終始していました。しかし,今年,実際に発表する立場になると,今までの自分が受け身であったと気付きました。そして自分自身が大会の盛会に寄与できうると知りました。例えば,発表内容について,自身の研究成果は勿論,参加者に考え,知ってほしい内容を選ぶこともできる。参加者としては積極的に質問することで,発表者にフィードバックを行い,研究内容をより良くする手助けができる。ホールの外で,より具体的な議論を交わすことで,研究が広がり,深まっていく。自身の発表テーマの一つであるジェンダーに関して言えば,宇宙飛行士候補者や学会員の女性比率が少ないことに違和感を覚え,その原因を追究し,宇宙に関わる人の多様性を高めたいと発足したプロジェクトです。今回はその現状をお伝えし,考える契機にしていただきたいという思いで発表しました。すると,応援の声を頂いたり,同じ意識を持っておられる先生から今後の方向性についてアドバイスを頂いたり,現状を変える方策について実現のチャンスを頂いたりと,有難い反応を数多くいただくことができました。
 また,今回は対面での交流を通じて学会や学問分野が醸成される様子を感じることができました。例えば,会場の各所で研究手法の具体的な相談が行われ,研究グループのみならず学会全体で研究を深めていく様子を目にすることができました。また,様々な企業の方や海外の方々も現地に来られ,日本の研究者にとどまらず,多様な人々の声を聞き,彼らと共に宇宙航空医学という分野を進めていく重要性を痛感しました。
 このような学問の発展や人とのつながりは,大会が現地で開催されたからこそ感じられたものです。また,個人的にはオンラインでは繋がれない方々と出会い,お話できたのも対面開催の恩恵であろうと感じました。
 SMJYCは,学生とアカデミアの先生方の架け橋として,毎年学生セッションで発表の機会を頂いています。今回も学生セッションを大会の最初に配していただき,私自身も大会の最初の発表者という大役を仰せつかりました。学生にこのようなチャンスが与えられるのは他の学会ではなかなかないことであり,未熟な学生である自分が今回記したような学びを得られたのも本学会の皆様のおかげであると大変有り難く感じております。今後は自身も学生として,積極的に意見を伝え,学会の盛会に貢献できればと思います。また,SMJYCとしても,さらに多くの方に活動を知っていただきお知恵を貸していただくことで,参加学生が様々な学びを得て,発表等の形で学会に還元したいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。