宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 2, 106-107, 2023

ニュースレター

(2)宇宙航空環境医学若手の会

寺田 昌弘

京都大学宇宙総合学研究ユニット

2022年11月に渋谷で開催された第68回大会(大会長:野村泰之先生)においても,例年に続き学生企画セッションの枠を設けていただきました。第一部としては,「若手の考える航空宇宙医学のこれから」ということで,京都大学の斉藤良佳さんから「コロナ禍を経て学生の活動はどのように変化したのか〜学生から見た航空宇宙医学の拡がり〜」と題して,Space Medicine Japan Youth Community(SMJYC)の活動報告などを交えて発表してもらいました。また,横浜市立大学の岩瀬すみれさん達は,「政策・ビジネスの観点から捉える宇宙医学」ということで,他団体との合同勉強会を通じて宇宙医学がどのようなニーズがあるのかを報告しました。京都大学の植村優香さん達は,「宇宙開発における働き方に関する議論−男女比に注目して−」をテーマに学会員からのアンケート結果などを交えてジェンダー問題について数々の示唆をいただきました。このように第一部では学生自身が様々な観点から宇宙医学分野をとらえ,今後の課題やこれからの可能性などを議論していたことが印象的でした。第二部では,基調講演としてTranslational Research Institute for Space Health (TRISH)のDr. Drit Donoveil から「Commercialization of LEO:Unleashing the Potential of Aerospace Medicine」というテーマで低軌道商業利用における宇宙航空医学の重要性を講演いただきました。会場からも活発な質疑応答があったと記憶しております。第三部では,三井物産エアロスペースの井上実沙規さんより「商業ステーションの可能性と宇宙医学・生物学における意義」ということで,ISS商用利用の取り組みの紹介と,宇宙医学分野に期待することなどをご発表頂きました。続いて,兼松株式会社の高田敦さんより「宇宙港を利用したダイレクトサンプルリターンと将来展望」という題名で,民間の宇宙実験サービスについてご紹介いただきました。第二部・第三部の話題は,若手の会の学生だけでなく,本学会の学会員の先生方にも非常に興味のある話題だったのではと思います。昨今の宇宙分野においては,民間ベースの商業利用や宇宙開発事業への参入など目まぐるしく状況が変化している状態です。有人宇宙飛行においても NASAやJAXAといった宇宙機関からの宇宙飛行士だけが今後は宇宙に滞在するわけではなく,一般の人々の宇宙滞在も活況になってくる時代です。そのような中,宇宙飛行士の健康管理を主眼とした宇宙医学研究のみでなく,今後は厳格に健康管理が難しいような一般の方の宇宙滞在についても我々学会員は着目して取り組んでいく必要があるように感じました。これまで通り,学会員の先生方のご活躍やご指導を中心として,若手の会に所属している学生達が今後も高いモチベーションを維持しながらこの分野に積極的に関わっていけるような場を提供していくことが我々の使命であると考えます。つきましては,今後も学生達の主体的な活動をぜひ温かい目で見守っていただきながら,適宜ご指導だけでなく,ともに活動していただけることをお願い申し上げます。来年度の岐阜での年次大会でもぜひ若手の会の活動にご期待ください。