宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 1, 14, 2023

学生企画セッション

 

若手の考える「航空宇宙医学のこれから」

宇宙開発における働き方に関する議論―男女比に注目して―

下結 香1,齊藤 良佳2,植村 優香3,三垣 和歌子4

1奈良県立医科大学 医学部医学科
2京都大学 医学部医学科
3京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻
4筑波大学大学院 人間総合科学学術院

Discussion on Work Styles in Aerospace Industry:Focusing on the Ratio of Men to Women

Yuika Simo 1, Yoshika Saito 2, Yuka Uemura 3, Wakako Migaki 4

1 Faculty of Medicine, Nara Medical University
2 Faculty of Medicine, Kyoto University
3 Graduate School of Medicine, Kyoto University
4 Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

Space Medicine Japan Youth Community(SMJYC)は,宇宙医学に関心を持つ若い世代が,各々の興味を深め学び合うコミュニティである。そのメンバーである我々は現在,宇宙医学に対する理解を深める活動に加え,今後の日本の宇宙開発分野をさらに活性化させる方法を模索している。
 時代の変化と共に,現代社会では多様性が重視されるようになった。多様性と収益率についての調査報告においては,性別の多様性と収益率の間に有意な正の関係性が確認されたことが報告されている(内閣府,2019)。
 宇宙業界においても,宇宙航空研究開発機構(JAXA)における2021年度宇宙飛行士募集に際し,「女性の活躍」の推進が示されるなど,意識改革が進められている。性別以外の点でも,国内においては専門分野や身長の制限が緩和されたこと,国外では欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士選抜において身体に障がいのある人が採用されたことなど,多様性拡大の気運が高まっている。
 宇宙業界における多様性の現状を考察する上で,本セッションでは,日本の宇宙開発に携わる労働者の男女比や,宇宙医学分野における男女比,学生と社会人における男女比の差に着目した。たとえば,SMJYCは,宇宙業界に対して興味関心を持つ全国の学生の一部が所属し,300名程度の規模を有する団体であるが,所属学生の男女比は概ね1対1である。一方,宇宙開発に携わる労働者においては,例えば,JAXAが公開している職員の男女比は,2022年4月時点において男性が8割,女性が2割である。ここから我々は,宇宙業界が女性に選ばれづらくなる要因が,女性のライフステージのどこかの段階において存在するのではないかという仮説を立てた。
 そこで,本発表に際し,SMJYCを主な母集団として,現在宇宙業界に興味を持っている学生を対象に,働き方やジェンダーに関して聞き取りを行った。また,本学会の発展に向け,日本宇宙航空環境医学会の学会員に対して意識調査を行った。調査内容,および結果についてはセッション内で報告した。
 なお,本テーマについては今後も継続的に検討を行い,活動を続けていく予定である。