宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 1, 12, 2023
学生企画セッション
若手の考える「航空宇宙医学のこれから」
コロナ禍を経て学生の活動はどのように変化したか
~学生から見た宇宙航空医学の広がり~
斉藤 良佳
京都大学医学部医学科
How Student Activities Changed Following the COVID-19 Pandemic:The Expansion of Aerospace Medicine among Students
Yoshika Saito
Faculty of Medicine, Kyoto University
【背景と目的】 Space Medicine Japan Youth Community (SMJYC)は宇宙医学を志す学生が共に学び合う機会を創出するべく,2017年よりスタディツアーや宇宙医療ハッカソン,論文抄読会などの様々な活動を行ってきた。その中で,2020年の春より続く新型コロナウイルス感染症の流行(コロナ禍)は,我々の活動を変える契機となった。関東・関西で開催予定であったスタディツアーを中止するなど対面での活動が減った一方で,オンライン化に伴うコミュニティへの参加者数の増加などプラスの影響もあった。今回は,学生企画の一環として,コロナ禍や世界の宇宙開発の進展の中で,コミュニティとしてのSMJYCの現在の活動や学生の状況,将来の展望について紹介する。
第一に,宇宙医学を学びたい学生と先生方が交わる場として,2021年に始まった月毎のオンラインでの講演会を継続的に開催している。今年は大学の研究者の先生方のみならず,自衛隊や航空医学の先生方にもお話を伺った。航空宇宙医学のプレーヤーの広がりに合わせ,今後は更に幅広いご専門の先生方をスピーカーにお招きする予定である。
コロナ禍で休止していた対面でのスタディツアーも今年の夏に復活することができた。受入機関の皆様のご協力のもと,航空自衛隊入間基地,慈恵医科大学,JAXA筑波宇宙センターをはじめとした3施設を訪れ,直接先生方と交流し,航空宇宙医学の現場を学ぶことができた。また,他の宇宙系学生団体と協力し,将来宇宙航空医学を学びたい中高生にwebサイト上で研究室を紹介する活動を始めた。
第二に,学生が自主的に学ぶ活動として,海外の教科書の翻訳,論文抄読会なども継続して行ってきた。教科書の翻訳プロジェクトに関しては,述べ50人ほどが参加し,各分野の専門家による監訳も踏まえて,より正確な知識の集積に努めている。現在はその知見を多くの人に広めるべく,成果物を公式な形で残そうと取り組みを進めている。
第三に,300人を超え,分野・年齢の幅が広まりつつある参加者と多様化する宇宙医学のプレーヤーが化学反応を起こす場としての役割,自分なりの宇宙医学を模索する学生たちの学びの共有を行う活動も開始されている。先生方のご協力のもと様々な経験を積んでいる学生や,今までの常識にとらわれない新しい経験をする学生が増えている。コミュニティがハブとなり,そうした学生たちの体験を報告会や文章の形でシェアする機会を創る。こうした国内外の学びのチャンスの共有により,彼ら自身により多くの学びを得てもらうだけでなく,学生と宇宙航空医学の接点を増やしていくことを目指す。