宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 1, 9, 2023

シンポジウム 2

 

コロナ禍の航空医学

客室乗務員に対する新型コロナウイルス感染症対策(withコロナに向けて)

原 順子,小澤 美貴,大久保 景子,関田 徹,大塚 泰史,松永 直樹

日本航空株式会社人財本部ウェルネス推進部 

Measures against COVID-19 for employees(for coexist with COVID-19)

Yoriko Hara

Japan Airlines Co. Ltd, Wellness Promotion Department

2019年12月に発生した新型コロナウイルス感染症は急速に世界中に拡散した。航空会社は,公共交通機関として感染拡大の防止と輸送力維持の両立が求められ,徹底した感染予防策の構築が必要になった。
 日本航空でも日本の定期航空協会のガイドラインと国際的な機関であるICAOの指針をもとに,旅客と従業員双方に対する感染対策を作成した。
 その中でも,直接航空機の運航に携わり,感染リスクが高い環境で働く客室乗務員の新型コロナウイルス感染症対策について,2021年開催の本学会(第67回日本宇宙航空環境医学会大会)で紹介した。
 日頃の健康管理に加え,業務内容の多様化,機内業務中の感染対策の充実化,ステイ先での行動制限,国際線乗務後のPCR検査の実施など,感染経路を考慮した対策を講じていること,またその結果,機内における感染の蔓延や二次感染を疑う例はなかった事を報告した。
 その後,オミクロン株の出現を経て,ワクチン接種の進捗や感染の動向により,各国のコロナ対策が徐々に緩和された。日本でも9月頃よりwithコロナに向けて,水際対策や国の指針が大幅に緩和されている。
 これらの状況に応じて,弊社では,新型コロナウイルス感染症対策の見直しや変更を適宜行なっている。客室乗務員に対するコロナ対策についても,海外での行動制限や出入国時の手続きの簡素化,機内業務の見直し,など,感染リスクを評価しながら段階的に変更している。また,今後も諸外国における社会・経済活動の正常化,世界的な感染の動向を踏まえて,感染対策を迅速かつ慎重に進めていくことが必要と考えている。
 本発表では,客室乗務員に対する新型コロナウイルス感染症対策がこの1年間でどのように見直されたか,また今後航空需要の回復や経済活動の正常化に向けてどのように展開すべきか,課題や検討事項について報告したい。