宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 1, 3, 2023

教育講演

地球と宇宙の再生医療の融合がもたらす価値
―ウクライナ人道支援に向けてのグローバルネットワーク構築―

弓削 類

広島大学大学院医系科学研究科教授
宇宙再生医療プロジェクト研究センター センター長

Value brought about by fusion of regenerative medicine on earth and in space
―Building a global network for humanitarian aid in Ukraine―

Louis Yuge

Hiroshima University, Graduate School of Biomedical and Health Sciences
Space Regenerative Medical Center

間葉系幹細胞を用いた脳梗塞や脊髄損傷等の神経再生医療が注目されている。我々は,神経と起源を同じくする神経堤由来の頭蓋骨骨髄由来間葉系幹細胞を樹立し,細胞治療の安全性および有効性の検証のための臨床研究を行っている。また同時に,幹細胞の質を高める方法として,物理的刺激に対する細胞応答性の研究のなかでも微小重力に着目して研究を行ってきた。これまでの20年間の成果を活かし,臨床応用を目指した微小重力環境を利用した戦略的脳梗塞の治療法の開発を行っている。地上での再生医療と宇宙での再生医療との融合が生み出す患者が求める再生医療の価値とは何かを追求している。
 現在ウクライナ人道支援のネットワークを形成し,間葉系幹細胞とロボットリハビリテーションを統合した医療をウクライナの市民や子供達に提供するプログラム(再生医療リハビリテーションプロジェクト:https://pbv.or.jp/donate/2022_ukraine_medical)を開始した。