宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 2, 99-100, 2022

ニュースレター

第67回大会に参加して

林  誠一

聖マリアンナ医科大学医学部医学科5年

 この度は,このような大変貴重な場に寄稿させて頂く機会を下さり,心より感謝申し上げます。私は2017年に発足した宇宙医学に関心のある学生コミュニティ,Space Medicine Japan Youth Communityにおいて活動しております。これは東京大学石橋拓真さんのお声がけによるものです。その縁で,日本宇宙航空環境医学会に参加させて頂くようになり,活動報告を,2019年第65回大会で「多様化する学生プロジェクトの今とこれから」という演題で発表する機会を頂きました。今回の第67回大会では「有人宇宙活動における心肺蘇生率向上に向けた課題検討」という演題を発表させて頂きました。本紙面をお借りし,今回の発表に至った経緯をご紹介させて頂きたいと思います。
 宇宙飛行士になりたいというのは,私の幼い頃からの夢です。そこで,医師として宇宙飛行士になるべく医学部に進学し,宇宙医学から宇宙開発や人々に貢献したいという夢を今,抱いています。特に,医療×テクノロジー×宇宙開発分野に興味を抱き,この分野から,日本だけでなく,広く世界全体の人類の未来に貢献したいと考えています。そこで宇宙医学分野の研究実習を先生方,同期生と開始し,その成果を聖マリアンナ医科大学学内研究室配属成果発表で発表いたしました。ご指導・ご協力頂いた先生方のおかげで,奨励賞を頂くことができました。臨床実習の際の縁で学内の先生を通じて本発表に登場したデバイスの開発に長年関わって来られた杉山 篤先生(東邦大学医学部教授)と面談させて頂き,心肺蘇生デバイスの開発の最新動向に関し,様々なお話を伺う機会を得ました。そのような折,本学会の演題申し込みを知り,私も何か航空宇宙医学分野に少しでも早く貢献したいと感じました。心肺蘇生デバイスと,JAXA有人宇宙技術部門が作成した技術ギャップ「有人宇宙活動において予想されうる宇宙医学/健康管理技術課題として心停止時の宇宙飛行士による自律的な心肺蘇生法(CPR)」に関する記憶が蘇りました。文献調査を重ね,「ITDとACD,2つのデバイスを用いたCPRを宇宙で行うことで,蘇生成功率向上を期待できる。NASAが発表した人工重力モジュールが利用可能となれば,頭部挙上が微小重力環境でも可能となる。ITDを用いたACD-CPRに頭部挙上を併用すれば,宇宙での質の高いCPRが実施可能となり,心肺蘇生率向上を期待できる。」という着想に至りました。多くの先生の温かいご指導により,演題の準備および発表を無事に行うことができました。その結果,今回の第67回大会では,優秀学生賞(Outstanding Performance Award)に選考して頂くことができました。
 今回の経験から私は,人との出会いや繋がりの大切さを改めて実感しました。なぜなら,紛れもなく様々な場所での様々な方々との出会い,繋がりがこの一つの発表内容を生んだからでした。今後,私も誰かの繋がりとなり,その誰かをどこかへ繋げられる人材となり,皆で宇宙医学分野の発展から宇宙開発や人々に貢献し,人類の未来を切り拓いていきたいと考えています。本学会は航空宇宙医学の先生方,宇宙飛行士の方々,JAXAの方々,航空関係者方もご参加される,大変心躍る学会です。本学会の先生方がご活躍されるお姿やお話は,私達学生にも早期から有人宇宙開発への寄与の可能性や勇気を下さいます。関心のある非医療系学生にも門戸の広い学会です。このような大変素敵な学会を,微力ではありますが,今後も宇宙医学分野ともに盛り上げていけたらと考えております。
 最後となりますが,指導教官である黄 世捷先生(聖マリアンナ医科大学循環器内科,臨床研修センター副センター長)に全般的なご指導を頂きました。抄録作成に際しては,杉山 篤先生に,準備の過程で発生した多くの疑問点の解決にはその他多くの先生にご指導頂きました。この場をお借りし,心より感謝申し上げます。