宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 2, 98-99, 2022

ニュースレター

第67回宇宙航空環境医学会に参加して

瀧澤 玲央

国際医療福祉大学成田病院 血管外科 助教

 まず初めに,今回この様な寄稿をさせていただく機会を与えてくださりました,第67回宇宙航空環境医学会会頭,南沢享教授をはじめ学会関係者の皆様に感謝を申し上げます。平成19年東京慈恵会医科大学卒の瀧澤玲央と申します。私は南沢教授の前任の須藤正道教授に懇意にしていただき学生の2年生の頃から須藤教授の実験のお手伝いをさせていただきました。その際に名古屋三菱重工内のDAS(Diamond Air Service. INC)の無重力実験の被験者をさせていただいたことは,私にとって大変貴重な思い出となっております。現在は縁あって国際医療福祉大学成田病院にて血管外科医をしております。2020年7月に国際医療福祉大学に赴任した際に,宇宙医学への憧れを若い学生さんたちと共有したいと考え,宇宙医学研究会という課外活動ゼミを主催させていただくことになりました。参加してくれている学生さんは12名で,まだまだ小さな研究会ではありますが,今回,第67回宇宙航空環境医学会にても我々の宇宙医学研究会から3名のとても優秀な学生さんたちが,各々が興味をもって調べたテーマで発表をしてくれました。また,その中で5年生の川原彩文さんが学生優秀賞をいただいたことは,大変嬉しく名誉なことと感じております。
 2021年はコロナウィルスのパンデミックの影響で様々社会活動が制限されている中で,宇宙開発事業においては革新的な1年であったと感じております。Crew Dragon(Space X社製のロケット)にて野口聡一さんがISSに向かって飛び立ち,Blue origin社やVirgin galactic社などが次々と宇宙飛行を成功させました。また,ZOZO社前社長の前澤友作さんがISSに滞在したことも記憶に新しいかと思います。また13年ぶりのJAXAの宇宙飛行士の募集も始まりました。宇宙がより身近になり,多くの人が宇宙旅行を楽しむ,そんな時代にまさに突入している瞬間に立ち会っていると感じてとてもワクワクしています。今回,第67回宇宙航空環境医学会にて一番印象に残っていることは,宇宙医学に興味をもってくれている学生達の熱意と行動力です。学生達主催のイベントもとても素晴らしく,この様な素晴らしい学生達が宇宙医学の領域に興味をもってくれているなら宇宙医学領域は今後,最も人気のある医学の領域になっていくのではないかと期待しております。
 現在,私たちは有志で臨床医の先生方にお声がけさせていただき短期・中期の宇宙旅行に民間人が参加した際の医学的懸念事項と対処方法を検討するレビュー論文作成のプロジェクトを行なっております。その目的は,先にも述べました通り誰しもが宇宙に行ける時代を想定しての医療インフラ整備の遅れを指摘すること,さらに誰もが安心して宇宙に行くことができ,かつ安全に地球に戻ることができる医療体制を整える必要があると感じたからです。参加してくださっている先生方は必ずしも宇宙医学に見識のある方ではありませんが,臨床医として第一線の先生方にお願いさせていただいいており,皆さん大変興味をもって楽しんで参加いただいております。
 今後,宇宙医学領域は宇宙開発事業の発展とともに最も注目される領域となっていくと考えております。その中で,一番大事なことは若手研究者のアイデアを一緒に真剣に考えていくといったチーム作りが重要と考えております。若輩者ではございますが,本学会を活気あふれるチームとして盛り上げていきたいと考えておりますので,今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。