宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 2, 95-96, 2022

ニュースレター

(2)第67回大会を終えて
第67回日本宇宙航空環境医学会大会の大会事務局長を務めて

暮地本宙己

東京慈恵会医科大学細胞生理学講座 宇宙航空医学研究室

 2021年11月20日,21日に東京慈恵会医科大学にて開催されました,第67回日本宇宙航空環境医学会大会(大会長:東京慈恵会医科大学細胞生理学講座 宇宙航空医学研究室 南沢享教授)の事務局長を仰せつかり,事務局業務を担当させて頂きました。はじめに,本大会開催にあたって,日本宇宙航空環境医学会本部,東京慈恵会医科大学,慈恵医大産業医学の会,宇宙航空研究開発機構(JAXA),株式会社メニコン,株式会社薬研社,一般社団法人ABLabの各団体・企業様から多大なるご支援を頂きましたことを深く感謝申し上げます。また,本大会を無事終えられましたのは,大会にご参加頂きました全ての皆様のおかげによるものと心より感謝いたしております。
 学会入会から日が浅く,この場をお借りして,少しだけ自己紹介させて頂くことをお許しください。私は旭川医科大学を2006年に卒業して研修医を終えた後,母校の解剖学講座(顕微解剖学分野)に9年間在籍し,光顕・電顕を用いた形態学的研究手法を学びました。もともと生命への重力の影響に興味を強く持っており,やがて宇宙医学研究への思いが高じて,2015年に本学会に入会させて頂きました。2017年に帯広畜産大学保健管理センターの特任准教授として異動した後は,本格的に宇宙医学の研究活動を始め,JAXAマウスサンプルシェアテーマにもご採択頂きました。帯広畜産大学在職中に,宇宙航空医学認定医となるために参加した,第13回宇宙航空医学認定医講習会のご講義にて初めて南沢教授にご面識を頂き,このご縁から知遇を得て,2019年4月より宇宙航空医学研究室に異動させて頂きました。異動する際には,私が希望した重力制御装置Gravite®を,高額な機器であったにも関わらず,研究室に導入して頂きました。これらの幸運に恵まれたことを感謝しつつ,GraviteとJAXAサンプルを活用して,生命への重力の影響の解明という自身のライフワークに,日々楽しく取り組んでおります。
 さて,第67回日本宇宙航空環境医学会大会の本格的な準備は,2020年4月の大会事務局会議からスタートいたしました。この頃は,ちょうどコロナウイルス感染症の流行が急速に悪化していた時期でしたが,本大会の開催は1年半ほども先であり,通常の現地開催を見越して準備を始めておりました。しかし予想に反して,その後もコロナ流行改善の兆しは見えず,2020年実施予定だった東京オリンピックが延期される事態に至って,多くの学会・学術集会も現地開催の中止に追い込まれました。その一方で,2020年から2021年には,イーロン・マスク氏率いるスペースX社や,ジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジン社が,有人宇宙飛行を立て続けに実現し,多くの民間有人宇宙飛行が行われ,13年ぶりのJAXA宇宙飛行士募集もあり,有人宇宙開発の次なるフェーズが到来しています。このように相反する状況下で,南沢教授が第67回大会テーマ「生きる〜宇宙のなかで,どんなとこでも〜」でお示しになったように,変化する社会環境に適応した大会開催を目指し,事務局者として力を尽くして参りました。
 厳しい社会情勢を鑑みつつ,南沢教授のリーダーシップのもとで実現された,現地会場およびオンラインによる第67回大会のハイブリッド開催は,ニューノーマル・ウィズコロナ時代への適応の象徴となったように思います。オンラインの導入により,現地会場での大会参加が難しい方々にも,多くのご参加と演題発表を頂くことができました。一方で,適切に感染予防対策された現地会場を設けることで,日本医師会認定産業医研修会を本学会大会として初めて企画・実施することもできました。現地参加必須である産業医研修会は,コロナ流行下では受講機会が少なくなっております。第67回大会で産業医制度生涯研修専門単位を取得して頂ける機会を作れたことで,認定産業医資格を有する会員・一般参加者の先生方に貢献できたと考えております。さらに本大会では,多くの若い学生が大会 ・ 大会運営に主体的に関わってくれました。若手の会によるシンポジウムや,学部生発表セクションに多くの発表演題があった他,大会事務局員に起用された学部生の活躍,大学間の学生グループを主体とする学生企画,学生のアテンドによるオンライン懇親会など,随所に若い力が輝きを放っておりました。そして何よりも,大会特別講演演者,学生企画ゲストとして土井隆雄先生,山崎直子先生の両宇宙飛行士から頂いたお話は,新たな時代の有人宇宙活動を強く印象付けるものであったと感じております。
 これは幾分個人的で恐縮ですが,本大会の準備にまつわる感慨深いエピソードを一つ申し上げたく存じます。第67回大会のポスター図案を考えていた際のこと,なかなか良いアイディアが思い浮かばず,困り果てて宇宙航空医学研究室内を探したところ,一つの講義資料を見つけました。故 須藤正道先生が作成された宇宙医学の講義資料でした。私にとって大変勉強になる内容で,ポスター作りも忘れて興味深く拝見していたところ,気象衛星「ひまわり」から撮影された地球の印象的な写真に出会い,それが大会ポスター図案となりました。「宇宙航空医学入門」の教科書などで,慈恵医大の須藤先生のお名前は以前からよく存じておりました。生前の須藤先生に,終にお会いできなかったことを日頃から残念に思っておりましたが,意外にもこのようなかたちでお助け頂いたことに,不思議なご縁を感じたのでした。
 この出来事のみならず,手探りで大会事務局を担当する中で,本当に多くの方にご助力を頂き,支えて頂きました。特に,大会準備にあたっては,月1回実施していた大会事務局会議に,第6代理事長であられる加地正伸先生が,お忙しい時間を割いて毎回ご参加くださり,多くのアドバイスとご支援を下さいました。学会事務局長の河野史倫先生には,学会ホームページの情報更新や,メーリングリストによる会員への周知等で大変お世話頂きました。京都大学・寺田昌弘先生には,プログラム編成・その他大会運営実務で多大なご協力を頂きました。加地先生,河野先生,寺田先生に,深く感謝申し上げます。また大会の開催にあたっては,座長・演者を務めてくださった全ての先生方,大会運営スタッフの皆様に,心より感謝申し上げます。最後に,大会業務全般にわたり,ご指導くださいました南沢教授をはじめ,ご助力頂きました東京慈恵会医科大学細胞生理学講座および宇宙航空医学研究室に所属する先生方,職員,学生の皆様に,改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。