宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 2, 78, 2022

開催報告

1a. 月惑星社会 : 医学ライフサイエンス分野の取り組み

泉 龍太郎

日本大学

 月惑星に社会を作るための勉強会の中で,「医学・ライフサイエンス分野」の目的は,宇宙という過酷な環境における医学的な課題の抽出と,その対策をまとめることが主な目的と考えている。ただ,地上における医療・ライフサイエンス関連の技術革新は目覚ましく,月惑星に社会が実現すると思われる,将来の技術を予測することは,そう簡単なことではない。そのため,本分野においては,以下の2つの方向性を打ち出し,それに向けて,検討課題をまとめることにした(表1参照)。
 1) 50年後ぐらい,100〜150名程度の社会。月社会の目的は月基地の建設・維持,研究開発等。現在のISSの延長線上で,南極越冬隊に近いイメージ。
 2) 特に時期は限定せず,1,000名,またはそれ以上。経世代,恒久的な滞在を含めた,月惑星への移住。

表1 月惑星社会に対する,医学ライフサイエンス分野検討の2つの検討の方向性

構成・目的月面基地宇宙移民
時期 50年後(2070年頃) 未定(200年後ぐらい?)
人数 100〜150名 数百〜1,000人程度?
人員構成 基地の維持・建設,観測,研究開発等に関わる人員
家族は同行しない
制限無し(家族,永住者を含む)
滞在期間 1回1年,生涯で最大3年程度(宇宙放射線被ばく量に依存) 制限無し(経世代を含む)
社会のイメージ ISSの延長線上,南極越冬隊に近いイメージ 同人数の社会(離島など)
地球との関係 地球を母体とした社会
観光者は10,000人/年程度?
人員・物質等で地球との交流は保たれていると仮定
医学的課題の検討の方向性 現在の医療技術の延長線上で想定 このような社会の構成に必要な医学的課題のリストアップとその対応策の検討(宇宙放射線対策,経世代を含む)

参考文献
 第12回月惑星の社会を作るための勉強会(2021年6月29日)
 https://www.jasma.info/moonvillagestudy/2021-2/