宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 1, 37, 2022

一般演題 2

16. 航空機内における新型コロナウイルス感染症対策―抗ウイルスコーティングを中心に

澤本 尚哉,千葉 元樹,木村 匡

株式会社北海道エアシステム

Antiviral Coating in an Aircraft Cabin as an Preventive Measure against COVID-19

Naoya Sawamoto, Genki Chiba, Masashi Kimura

Hokkaido Air System Co., LTD.

【目的】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により,公共交通機関にはより厳しい感染対策が求められるようになった。当社では航空機内をはじめ,空港施設についても様々な対策を行っている。本発表では航空医学的に関心の高い,機内における感染対策について紹介するとともに,それらの対策について文献的考察を行うことを目的とする。
 【方法】 2021年9月1日現在,当社の所有する機材のうちATR42-600型機について行っている機内感染症予防対策について調査対象とした。文献調査においてはピアレビューのある学術誌に加え,感染対策製品会社や航空機メーカー等の技術的資料も対象とした。
 【結果】 航空機について抗ウイルス加工および,抗菌加工を行った。使用コーティング剤はDiamond Magic D-VII(中村・フクイヤ,愛知県)を使用した。座席のテーブル,肘掛け,シートベルト,収納棚,壁面など,旅客が触れる箇所を中心に実施した。またその他の部分は毎晩消毒液にて拭き取る作業で対応している。
 【考察】 航空機の機内空調は感染伝搬には強いとされるが,昨今のCOVID-19拡大により,一層の感染対策が求められている。当社ではその一環として接触感染対策のため航空機内の抗ウイルス加工を行い,SIAA(抗菌製品技術協議会)の認証を受けている。
 SIAAとは適正で安心できる抗菌加工製品の普及を目指し,メーカーや試験機関が集まってできた団体のことである。抗ウイルス加工は光触媒,重金属等の様々な製品があり,SIAAマークはISO21702に準じた試験法で一定以上の抗ウイルス性が認められた場合に表示できる。試験で用いた特定のウイルスに対する効果を明示する場合は,薬機法に留意が必要である。
 航空機の部品は耐空性を確保するために厳しい基準のもと管理されており,機内に用いることのできる消毒剤も規格がある。コーティング実施に当たっては各メーカー側との確認を行った。
 COVID-19の流行は引き続き予断を許さない状況であり,当社では引き続き様々な対策を続けていく予定である。