宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 1, 32, 2022

一般演題 2

11. 船外活動用携帯型除湿装置の試作

田中 邦彦

岐阜医療科学大学 大学院保健医療学研究科

Development of defumidifier for extravehicular activity

Kunihiko Tanaka

Graduate School of Health and Medicine, Gifu University of Medical Science

【目的】 宇宙空間あるいは月面において,与圧されている宇宙船や基地の外で有人活動を行うには,船外活動用宇宙服(以下,宇宙服)を着用する必要がある。船外活動は高度真空空間で行うため,宇宙服はその内外の圧較差によって膨張し,可動性が低下する。この状態で,かつ密閉空間での作業であるため体温が上昇する。この体温上昇を抑制するため,現在日米の宇宙飛行士は最内層にLiquid Cooling and Ventilation Garmentを着用している。 この代替品として,これまでに我々は身体の代わりに衣服が発汗し,その蒸散で体温上昇をより抑制する自己発汗式蒸散服を試作し,特許取得した。しかし,密閉された宇宙服内部では湿度が短時間のうちに100%に到達するため蒸散による冷却が見込めない。そこで今回,この自己発汗式蒸散服と組み合わせて冷却を促進する除湿装置を考案し,その有用性について検証した。
 【方法】 二酸化ケイ素を封入したケースに2m/sで送風する除湿装置を2組製作した。密閉したボックス内を噴霧器によって加湿し,湿度100%に到達させた。加湿を継続させつつ3分後に除湿装置を挿入し送風を開始した。ボックス内の湿度と温度を連続的に計測し20Hzでサンプリングした。
 【結果】 送風開始後2-3分で湿度が低下し始め,15分程度で平均59%,プラトーに達した。湿度低下とともに温度も低下したが,除湿開始から10分前後から上昇に転じた。
 【考察】 二酸化ケイ素に対する送風・空気環流によって有効に除湿ができることから,携帯型除湿装置の基本構造として応用可能であると考えられた。しかしながら湿度低下が十分とは言い難い。今後さらに除湿剤の材質,分量等を検討し,より有効かつ持続時間の長い携帯型除湿装置を考案したい。