宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 1, 21, 2022

学生企画

宇宙軌道上実験の可能性・宇宙医療ビジネスの展望

山口 裕也1,4,石橋 拓真2,4,原口 高伸1,4,大嶋 理香1,4,前谷 浩史1,4,宮下 裕策3,4

1東京慈恵会医科大学・細胞生理学講座・宇宙航空医学研究室
2東京大学医学部医学科
3京都大学医学部医学科
4Space Medicine Japan Youth Community

Aerospace Medicine in New Space:Possibility of Life Science Experiments in Orbit and Expectation of Aerospace Medical Business in Commercial Spaceflight

Yuya Yamaguchi1,4, Takuma Ishibashi2,4, Takanobu Haraguchi1,4, Rika Oshima1,4, Hirofumi Maetani1,4, Yusaku Miyashita3,4

1Med Student, Division of Aerospace Medicine, Department of Cell Physiology, The Jikei University School of Medicine
2Med Student, The University of Tokyo
3Med Student, The University of Kyoto
4Space Medicine Japan Youth Community

皆さんは,宇宙と聞くとどういった印象を持たれているでしょうか。「何かとても大きくて,よくわからないもの」や,「地上で生活している私たちには関係のないもの」と考えておられる方も少なくないのかなと思います。しかし,Space Xによる民間宇宙旅行が成功したり,Amazon創業者のJeff Bezos氏が宇宙旅行を成功したりと,宇宙は私たちにとって身近な存在となりつつあり,人類が宇宙を目指す時代はもうすぐそこまで来ています。
 盛んな宇宙開発の一方で宇宙航空医学はまだ未解明な部分が多くあります。また,無重力や放射線など,宇宙空間では地上と異なる数多の壁が私たちの前に立ちはだかり,これらから宇宙飛行士を守り,健康管理をすることは現代において必須要件となってくるでしょう。そうした宇宙医学を少しでも発展させると同時に,学生などより多くの方々に宇宙医学に興味を持ち,少しでも宇宙を身近に感じていただければ,学生企画としては大変嬉しく思います。
 2020年11月20日〜21日に,東京慈恵会医科大学二号館一階講堂で第67回日本宇宙航空環境医学会大会が開催されます。学会では, “生きる?宇宙のなかで,どんなとこでも?”をテーマとし,日進月歩で進む宇宙開拓時代において宇宙航空開発が今後どのように発展していくかを,登壇者の方々を交えながら議論していきたいと考えています。
 企画 @ 〈せりか基金コラボ企画〉軌道上実験の可能性を考える
 漫画「宇宙兄弟」に登場する伊東せりか宇宙飛行士にちなんだ「せりか基金」とのコラボ企画です。作中では,天文学者のシャロンや伊東せりかの父がALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し,その治療法を開発するべく伊東せりか宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)で実験に奮闘する様子が描かれています。「せりか基金」は,現在も有効な治療法が無いALSに対する新規治療法開発を支援する基金です。企画内では,せりか基金代表の黒川久里子様に「せりか基金」の歩みについてご講演いただき,実際にせりか基金賞を受賞された浅川和秀先生に,ALS研究の一部をご紹介いただく予定となっております。また,ISSで実験を行うような宇宙兄弟の世界線にどの程度私たち人類が近付いたのかを検証するべく,小林稜平様にもご講演いただきます。
 企画 A 宇宙旅行時代における,「宇宙航空医学×ビジネス」の必要性と可能性
 民間での宇宙旅行の機運が高まりつつある中,宇宙飛行士の健康管理を行うことはとても重要です。さらに,より多くの人が宇宙に行けば行くほど,こうした問題は避けては通れない問題となり,ビジネスとしての市場も大きくなります。このような,「宇宙航空医学×ビジネス」といったテーマで,今後の展望についてご講演いただこうと考えています。セッション内では,JAXA新事業促進部から菊池優太様,一般社団法人スペースポートジャパンから宇宙飛行士の山崎直子様にご登壇していただき,学生の意見も交えつつディスカッションを行っていきます。