宇宙航空環境医学 Vol. 59, No. 1, 17, 2022

シンポジウム 4

航空会社における新型コロナウイルス感染症対策

客室乗務員に対する新型コロナウイルス感染症対策

原 順子,小澤 美貴,大久保 景子,関田 徹,大塚 泰史,松永 直樹,牧 信子

日本航空株式会社人財本部 健康管理部

Countermeasures against new coronavirus infection for flight attendants

Yoriko Hara, Miki Ozawa, Keiko Okubo, Toru Sekita, Yasushi Otsuka, Naoki Matsunaga, Nobuko Maki

Japan Airlines Co., Ltd., Medical Services Human Resources & Flight Crew Medical Services Flight Operations

2019年12月に中国・武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は航空ネットワークを通して,瞬く間に世界各国に拡散した。世界各地で出入国制限などの強力な措置が取られ,国内でも,緊急事態宣言が出され,水際対策や国内移動の制限がなされた。
 各国の航空会社は運休・減便を余儀なくされるとともに,物流・運送サービスを担うという社会的使命により最低限の事業継続も確保する必要があった。
 つまり,公共交通機関として感染拡大の防止と輸送力維持の両立を図ることが求められ,そのための徹底した感染症対策の構築が必要となったのである。
 日本航空でも2020年2月から運休や減便を行い,必要最小限の運航のみ,徹底的な感染対策を行った上で継続している。
 一方で,客室乗務員は保安要員,サービス要員としての業務を全うするために自己の健康を維持・管理することが求められている。乗務に支障をきたさないために,日頃からケガ,感染症,疲労に対する予防に勤めることが指導されているのだ。
 特に感染症に関しては,頻繁に海外海外滞在するため感染症に罹患する危険性が一般に比べて高いということ,また,発症した場合,乗客や社会へ与える影響が大きいということより,感染症予防は乗務員本人のみならず所属の安全配慮義務として義務付けられている。
 新型コロナウイルス感染症拡大以降も,客室乗務員に対して従来の感染症対策だけでなく,感染経路を考慮した徹底した感染予防対策が講じられるようになった。不特定多数且つ感染拡大地域からの旅客と接することから,機内での接触機会を減らすためのサービスの見直しや保健衛生上の処置(マスク,手袋などの着用),などが講じられている。
 さらに変異株の出現以降は各国の出入国条件や日本の水際対策の強化に伴い,社内でのPCR検査体制の構築,新型コロナワクチンの職域接種の実施も行っている。
 今回のシンポジウムでは,直接航空機の運航に携わり,感染リスクが高い環境で働く客室乗務員の具体的な新型コロナウイルス感染症対策につき報告する。