宇宙航空環境医学 Vol. 58, No. 2, 133, 2021

ニュースレター

5.  第66回大会関連
第66回大会に参加して

浮田 優香

川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科 健康体育学専攻

 この度は,このような場に寄稿させていただく機会をいただき,心より感謝申し上げます。
 今回私は,「水中立位安静時における水位が心臓の位置変化に及ぼす影響」について発表させていただきました。本研究を行う経緯から説明します。宇宙飛行士の微小重力下における循環器系の動態に注目しました。2014年にはNASAにより宇宙空間に滞在中の宇宙飛行士の心臓は,球状に大きくなるとともに弱くなることが発表されました。このことは,微小重力状態で長時間過ごすと,心臓疾患につながる可能性があることを示唆するものでした。そこで私は,心臓に着目し,模擬微小重力環境である水中において実験を行いました。本研究において,鎖骨浸水時に心臓位が移動することを観察しました。このことから,微小重力下において心臓の位置が移動する可能性が推察されました。心臓の位置が移動することは,ヒトにとってプラスに働くか,マイナスに働くか未解明ですが,この知見が何らかの形で宇宙飛行士の健康維持に貢献できる内容であると考えます。水中は浮力だけでなく水圧など様々な影響を受けます。そのため,本研究で得られた結果を直接宇宙空間に当て嵌めることはできません。しかしながら,微小重力環境にとって重要な知見であると考えます。
 指導教員である小野寺昇先生に「向井さん来るけど行く?」とお声がけいただき,私は,第64回日本宇宙航空環境医学会で初めて学会に参加させていただきました。幼い頃から憧れていた向井千秋元宇宙飛行士とお話しさせていただき,大変貴重な体験をさせていただきました。さらに,先生方の発表を拝聴し,研究デザインを学ぶことができ,多くの刺激を受けました。また,Space Medicine Japan Youth Communityに所属するきっかけともなり,宇宙医学に興味を持ちました。まだ研究を始めて1年目ですが,今後も精進して参ります。