宇宙航空環境医学 Vol. 58, No. 2, 130-131, 2021

ニュースレター

5.  第66回大会関連
第66回日本宇宙航空環境医学会大会大会長を務めて

松崎 一葉

筑波大学 医学医療系 産業精神医学・宇宙医学グループ

 このたびの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに,診療に従事します医療関係者の皆様には心より敬意を表します。COVID-19の流行拡大を受け,本大会開催方法について,参加される皆様にとって安全かつ可能な限り意義のある開催の在り方を,大会事務局と学会理事会とで検討を続けてまいりました。その結果,皆様の安全と健康を第一に考え,2020年11月12日(木)から14日(土)に京都市で予定されていました現地開催を中止とし,誌上開催(第58巻1号)に変更することに決定いたしました。
 学会運営も,COVID-19の感染防止を常に考えなければならないニューノーマルに対応しなければなりません。有効な治療薬が無く,ワクチン接種も十分には進んでいない状況で,日々感染が拡大しているCOVID-19に対して今我々ができることは,集会や会食を避け感染予防に徹することです。これまでの学会ではまさに,人が集まり議論を行い,会食もしていましたので,残念ながら従来の開催方法を断念せざるを得ませんでした。
 誌上開催になりましたが,大会のクオリティは保ちたいと考えていました。本大会では,一般演題,特別講演,若手セッションと研究奨励賞の受賞者講演を企画しました。一般演題は2ページの見開きで誌面を割き,ショートペーパーのような形で皆様にご覧いただけるようにしました。誌上開催ではありましたが,多くの皆様から演題を出題いただき感謝しております。特別講演では,『月はすごい』の著者の大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻准教授の佐伯和人先生に惑星地質学者の視点から月探査の現状と未来について語っていだきました。筑波大学医学医療系教授の村谷匡史先生からは,2015年から始まった新学術領域研究「宇宙に生きる」プロジェクトに参加されたご経験からオミックス解析の今後の展望についてご紹介くださいました。お二方のご講演から,近い将来実現することであろう月探査・月居住に向けての重要な示唆をいただくことができました。若手セッションと研究奨励賞の受賞者講演では今後の宇宙航空環境医学を牽引していくだろう若手の先生方から講演をしていただきました。
 本大会は集まっての議論や懇親会が開催できなかったため,最新の知見などの意見交換ができませんでした。コロナ禍では人と人とのつながりが希薄になってしまっています。オンライン通信を利用したコミュニケーションの環境作りが今後の課題となると考えています。COVID-19の感染拡大が抑えられ,笑顔で学会場に集まり意見交換ができる日が早く来ることを願っています。最後に,今回初めての試みである誌上開催でしたが,多くの皆様からご支援いただき開催することができたこと,この場をおかりしてお礼を申し上げます。