宇宙航空環境医学 Vol. 58, No. 2, 111, 2021

開催報告

令和2年度 宇宙基地医学研究会 開催報告

宇宙基地医学研究会 世話人代表 泉 龍太郎

日本大学/JAXA

 令和2年度は,コロナ感染症の猛威が振るう中,宇宙航空環境医学会自体も誌上開催となりましたが,宇宙基地医学研究会は,令和3年2月19日(金)の午後6時から,オンラインで開催しました。今年度のテーマは「南極」を取り上げ,4名の講師の先生と1名のコメンテーターより話題を提供して頂き,また実際に池田先生の講演の中で,南極越冬隊に参加中の中野志保先生に,ご参加頂き,南極の様子を実況中継して頂きました(詳細は「講演要旨集」をご参照下さい)。今回,参加者は学会員に限らず,一般の方も無料で参加可能としました。その結果,実際に南極に越冬された経験を持つ方を含め,全部で118名の方にご参加頂きました。
 研究会のアンケート調査には58名の方からご回答頂きましたが,そのほとんどの方からご好評を頂きました (「アンケート調査結果」参照)。アンケート結果を少し詳しく見てみますと,最も印象深かったという回答が多かったのは,実際に南極と中継を行ったことで,南極での厳しい環境に加え,その南極とリアルタイムで通信出来ることが,非常に大きなインパクトであったと思います。研究会の課題としては,時間配分に関する要望が多く,もう少し質疑応答や自由討論の時間を確保すべきであったかと反省しています。またVOD配信や資料のダウンロードの要望もありましたが,こちらは講師の方に自由にお話し頂くため,最初から録画配信は行わない方針としていました。用いたZoomに関しては,大半の方がトラブル無く,非常にスムーズだったとの回答でしたが,1件だけ音声不良との報告がありました。今後の研究会の活動としては,やはり「宇宙」に関するものが最も多かったですが,「精神心理」の問題や,「南極」を希望された方も居られました。学会に対する要望としては,宇宙を始めとした,様々な研究活動の他に,「若手の活動の育成」や,「社会への情報発信」,また今回の研究会のような「オンラインを取り入れた学会活動」が出されています。
 最後に,今回の研究会にご登壇頂いた演者の先生方,事務作業を担当して頂いた研究会世話人の先生方,及び実際のZoomでの研究会の運営にご協力頂いた筑波大学産業精神医学・宇宙医学グループ(松崎一葉教授)の皆さまに御礼申し上げます。

令和2年度 宇宙基地医学研究会
令和3年2月19日(金)18:00〜20:10 Zoom

  1. 南極昭和基地での越冬生活
     秋元  茂 先生(第51次隊; ミサワホーム)
  2. サバイブとアライブの境界線〜南極・ヒマラヤベースキャンプ・火星模擬実験〜
     村上 祐資 先生(第50次隊; 極地建築家・NPO法人フィールドアシスタント代表)
  3. 日本南極地域観測隊の医療活動と医学医療研究
     池田 篤史 先生(筑波大学附属病院)
     ※南極越冬隊との交信(中野 志保 先生)
  4. 月有人探査における精神・心理学的課題─南極越冬隊の心理研究から学ぶ
     立花 正一 先生(平沢記念病院副院長,元JAXA宇宙飛行士健康管理グループ長)

コメンテーター 村井  正 先生(第26次隊; 日本原子力研究開発機構・産業医/JAXA)
司会 泉 龍太郎(日本大学/JAXA)