宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 67, 2020

ニュースレター

4. 第64回大会関連 (4)第64回大会に参加して
若手の会シンポジウムに参加して

石橋 拓真

東京大学教養学部(前期課程)理科III類2年

 この度は,このような場に寄稿させていただく機会を頂き,誠にありがとうございます。私は,2018年11月に開催されました第64回日本宇宙航空環境医学会に於きまして学生シンポジウム「現代の医学生は宇宙医学にどのように関わっていけるのか」に参加させていただき,「架け橋は宇宙医学〜繋がり始めた医学生〜」という題で,医学生というセクターから現在盛り上がりを見せている宇宙医学関連の動向についてご報告させていただきました。
 簡単ではございますが,この発表に至るまでの経緯や所感,そして今後の展望を記させていただければと存じます。
 宇宙飛行士に憧れての医学部入学の後,宇宙医学への興味から先生方を訪問してはお話を伺って回っていた1年生の夏に,若手の会世話人の河野先生が「医学生への認知度が全然足りていない。もっと関わって欲しいのに」と嘆かれるのをお聞きした際に,「それなら自分にもできることはあるかも知れない」と考え,「宇宙医学スタディツアー」を発案いたしました。様々な先生方に受け入れのお願いをして回り,JAXAの古川先生や込山様,日大の岩崎先生のご厚意により2018年春に第1回を開催できました。また河野先生より大阪医大の鈴木さんをご紹介いただき,「宇宙医学を学生からも盛り上げて行こう」と意気投合,阪大の岡田さんも合わせて3人で宇宙医学に関心のある医学生のLINEグループを作っていきました。これらが元となり,日本の医学生による宇宙医学コミュニティSpace Medicine Japan Youth Communityが発足しました。こうした活動をご評価いただき,年次大会の若手の会シンポジウムの時間をそのまま学生の発表・討論にさせていただくというまたとない機会を河野先生より頂きました。
 このようなご縁と幸運が重なり,これまでの活動やその背景,洞察を発表させていただくに至りました。学生の間で宇宙医学が注目を集めており,その背景には医師のキャリアの多様化が進み独自性が求められるようになるという時代の潮流があること。他方宇宙医学の分野としても若者の取り込みが必要で,従って双方のニーズを満たす受け皿が必要であること。そしてそのようなコミュニティの活動として,Facebookを用いた広報活動やスタディツアーなどを行っていることなどをご報告させていただきました。その後のディスカッションではJAXAフライトサージャンの嶋田和人先生,同志社大学の大平充宣先生,渋川医療センターの石北直之先生にご登壇いただき,フロアを巻き込んでの大変活発な議論が行われました。
 発表を終えて最も強く感じているのは,「宇宙医学を盛り上げるのには今は非常に良い時期ではないか」ということです。2018年9月には日本人経営者がSpaceXの月面旅行に契約した旨のニュースが世界を駆け巡り,12月には宇宙旅行機世界最大手のVirgin Galactic社がテストフライトに成功しました。このように民間宇宙旅行に向けた動きがみられる一方,有人宇宙探査に向けても,JAXA有人宇宙技術部門が今後乗り越えるべき「技術ギャップ」を整理して「将来有人宇宙活動に向けた宇宙医学/健康管理技術研究開発に係る意見募集」を行う等,これまで以上に盛んに創発が起きていくものと思われます。そしてその時期に宇宙医学に関して主体的に活動している学生が登場しているのも,非常に幸運な巡り合わせと捉えております。発表後には「コンテンツが提供されるのを待つのではなく,自ら取りに行き,作り出す姿勢が大切」とのご指摘をいただきましたが,まさにその通りと考えております。この機を逃さぬよう,学生ならではの視点で積極的に活動してまいる所存です。
 最後に,第64回大会長である和気秀文先生,発表の機会を与えてくださいました河野先生,ご登壇いただきました大平先生,嶋田先生,石北先生をはじめ,お世話になった諸先生方に厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。