宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 63, 2020

ニュースレター

3. 各分科会だより (3)宇宙航空環境医学若手の会
宇宙航空環境医学若手の会から

河野 史倫

松本大学・大学院健康科学研究科

 宇宙航空環境医学若手の会は,日本宇宙航空環境医学会に所属する若手学会員によって構成される組織です。現在,担当理事を含む5名の学会員が世話人として宇宙航空環境医学若手の会の運営を行っています。年次大会における若手の会シンポジウムの企画・開催を主な活動としてします。2016年(第62回大会)は「宇宙旅行〜私も宇宙へ行けますか?」,2017年(第63回大会)は「地上に還元できる宇宙医学研究の可能性」,2018年(第64回大会)は「現代の医学生はどう宇宙医学に関わっていくことができるのか」というテーマでシンポジウムを開催しました。年によって内容は様々ですが,その時々に若手メンバーが抱える疑問や問題などを取り上げて,学会員の先生方と討論することを方針としています。若手メンバーには宇宙医学フィールドでの活動を目指す人が多く,宇宙医学の現状や今後の発展,自身がどのように分野に従事できるのかという内容が焦点になります。特に近年は医学生の学会参加が増加しており,医学生のキャリアプランとも合わせた活動も始まっています。宇宙医学に興味がある人や宇宙医学を目指す人は,本若手の会に是非参加し活動してもらいたいと思っています。
 NASAとJAXAは他の国際宇宙ステーションパートナーと協力し,月を周回する深宇宙探査ゲートウェイを建設することを発表しました。このゲートウェイを拠点とし,月面上の無人探査ミッション,さらにはヒトが月・火星へ到達することを目指します。先日JAXAは,現在国際宇宙ステーションで行われている宇宙飛行士の健康管理運用と比較して,超長期宇宙滞在を要するミッションでは技術的に足りないと思われる課題を「技術ギャップ」として策定しました。神経,心疾患,代謝,歯科疾患,眼病,骨,結石,免疫,被ばく,心肺機能,筋力,精神,影響不足,衛生,救急救命などのリスク分類に対して,合計86項目の技術ギャップが提示されました。同時に,今後はより幅広く領域横断的な医学見識・医療技術が必要であるということにもなります。本若手の会としても,今後はこのような技術ギャップの克服に向けた議論や意見交換を積み重ねていきたいと考えています。「より遠く」宇宙を目指すことで,新たな医学・医療が必要となり,宇宙医学はさらなる発展をする。そんな時代を迎えています。