宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 62, 2020

ニュースレター

3. 各分科会だより (2)宇宙基地医学研究会
宇宙基地医学研究会の活動報告

泉 龍太郎

担当理事

 平成30年11月22日の日本宇宙航空環境医学会の理事会より,前任の大島博先生に代わって,宇宙基地医学研究会の世話人会の代表を務めることになりました。現在の勤務先は日本大学で,本研究会の窓口も,同大学となりますが,JAXAきぼう利用センターの客員も務めています。私がこの研究会の世話人となったのは,平成26年からですが,毎年,コンスタントに1回の研究会が開催されています。平成29年度の研究会は,JAXAの鈴木豪先生がまとめ役となり,「閉鎖環境と精神心理」をテーマとして,陸上自衛隊の山本泰輔先生,自衛隊中央病院の澤村岳人先生をお招きし,同年9月1日に,お茶ノ水駅の近くの会議室で開催しました。その時期に,世間でも話題となった自衛隊の海外任務に関し,問題となるのは危険業務よりも,むしろ日常の拘束されたルーチンの業務であること,そのような限られた人間関係の中では,どうしても特定の個人に対する攻撃(=いじめ)が生ずるため,その対応をしなければならないこと,また海外派遣時だけでなく,帰国してからの精神心理面での適応に関しても配慮が必要であり,しかもその対応は帰国前から準備しておかなければならないこと等,非常に興味深いものでした。今後の火星等を目指した長期の有人宇宙ミッションに対しても,関連の深い内容だと思われます。参加者の方々も同様に,かなり関心を持たれたようで,例えば翌平成30年5月に熊本で開催された第91回日本産業衛生学会では,筑波大学産業精神医学・宇宙医学グループの松崎一葉先生が中心となって「極限の産業医学」と題した自由集会を開催しましたが,その中では山本先生に来て頂き,自衛隊の海外任務の話題を提供して頂きました。ちなみに,松崎先生は,2020年に開催される第66回日本宇宙航空環境医学会の大会長を担当される予定となっています。
 今後の活動計画ですが,現在も国際宇宙ステーションで飛行士の長期滞在が行われていて,日本からも数名の宇宙飛行士が参加しており,実験装置としては,日本で開発して「きぼう」モジュールに搭載されている小動物飼育装置を用いたマウス飼育ミッションが,ここ3年は,コンスタントに年1回のペースで実施されており,さらに今後の有人宇宙活動の計画として,月や火星ミッションが度々話題になっていることから,年に1回は,将来を見据えた話題を念頭に置いて,研究会の活動を継続して行きたいと考えています。現在の世話人は,井上夏彦氏(JAXA),大島博氏(JAXA),大本将之氏(久留米大学),鈴木豪氏(JAXA),及び立花正一氏(平沢記念病院)ですが,世話人に限らず,学会員の皆さまからも,本研究会にふさわしい話題等があれば,ご意見をお寄せ頂きたいと考えています。本研究会へのご支援を,よろしくお願いします。