宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 62, 2020

ニュースレター

3. 各分科会だより (1)臨床分科会
臨床分科会開催報告

五味 秀穂

臨床分科会担当理事

 平成30年9月7日,慈恵医大講堂において臨床分科会を開催した。暫く休会状態であったが,今回はテーマを「航空身体検査制度について語ろう─民間,防衛省,FAA,EASA─」と題して,4名の演者の方々に講演をお願いした。
 世界の航空身体検査制度の比較,特に今回はwaiver制度に注目し,その問題点などを議論し,将来に対しての改善点を探った。
 まずは日本の民間航空機乗組員に対する航空身体検査及びそのwaiver制度となる「国土交通省航空身体検査証明審査会」について,国土交通省航空局安全部運航安全課医学評価官である関田先生から現状についてご報告頂いた。審査会に提出される案件の数は,年間約1,200件とここ数年横ばい状態であるが,領域では精神科領域の案件が増えてきているとのご報告であった。
 次いで防衛省の航空自衛隊乗組員の身体検査制度について,防衛省航空自衛隊目黒基地衛生課長の高田先生からご報告頂いた。防衛省は独自の身体検査基準を有し(航空法から除外),それに基づいた身体検査制度とwaiver制度を運用・実施している。操縦士だけではなく,航空業務従事者は身体検査証明を取得(合格)することが必須で,有効期間は14か月である。米国空軍の制度なども参考とされているとのご報告であった。
 3番目として,航空医学研究センターから五味が,米国の身体検査制度(Federal Aviation Administration(FAA))について報告した。米国の指定医の数は約2,800名(日本は約160名)で,身体検査の数は年間約38万件である。特別判定として出される(許可)ライセンスはその内の約9%で,循環器に関するものが約37%と一番多い。また日本と異なり異議申し立て制度も設けられているとの報告であった。
 最後にやはり航空医学研究センターから高添先生が,ヨーロッパ(Europian Aviation Safety Agency(EASA))の制度について報告があった。EU域内の法的枠組み,身体検査制度,照会制度〜waiver制度について報告があった。
 約60名の参加者があり,質疑も活発で,盛況のうちに終了した。