宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 58, 2020

ニュースレター

4. 第63回大会関連 (4)第63回大会に参加して
第63回大会に参加して

熊谷純之介,南川 容子,永井紗恵子

北島耳鼻咽喉科医院, 東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

 この度は,このような場に寄稿させていただく機会を頂戴し,ありがとうございます。私たち3人は,先日開催されました第63回日本宇宙航空環境医学会大会の学生セッションに参加させていただきました。簡単ではありますが,学会発表に至った経緯と所感を述べさせていただきたいと思います。
 まず,私たちが在籍しております大分大学医学部では,4年生のカリキュラムの一環として,研究室配属の期間が設けられています。学生は学内外の興味のある研究室に約2ヶ月間お世話になり,限られた期間の中で実験や調査を行い,その結果を教員や学生の前で研究発表することができます。学生がお互いに切磋琢磨し,また医学研究の楽しさを経験できる貴重な機会となっています。私たちはその研究室配属において,大分大学福祉健康科学部 徳丸治先生のお力添えで,防衛医科大学校防衛医学研究センター異常環境衛生研究部門 藤田真敬先生のもとで,災害時の避難所における医学的な調査研究をさせていただきました。折しも,熊本地震が発生した2016年4月からまだ日が浅く,私たち自身も度重なる余震に恐怖を感じながら学生生活を過ごしていたことを覚えています。
 大規模災害時に避難するという状況は,地域住民にとって自分たちの生活を強制的に捨てなければならない事態だと思います。混乱した状況下では,インフラの途絶や食糧を含めた各種物資の不足,そして医療システムの崩壊が生じます。そのような苛酷な環境の中で,避難所という一時しのぎの空間に大勢の人が寝泊りしなくてはなりません。当然,急性期の救命活動のみならず,中長期にわたる避難所生活による健康被害,特に感染症への対応も必要となります。避難所生活から生じる災害関連死のリスクは決して軽視できません。このような背景のもと,避難所生活における薬剤の管理(熊谷),栄養管理(南川),そして感染症予防(永井)という3つの視点で,それぞれ調査研究を行わせていただきました。
 災害避難所における医薬品に関してまず感じたことは,各調査が十分に行われていないという現実でした。そもそも,災害時は調査を行えるような余裕がありません。そして,個人情報保護法の限界についても課題を見つけることができたよい機会となりました。確かに服薬歴等は究極の個人情報ではありますが,生死がかかっている状況においてまでも,守るべき個人情報として片付けてよいものでしょうか。これは人類の考え方の発展において,今後議論すべき課題とも言えるのではないでしょうか。
 避難所における栄養管理を調査する中で,「生きるための食事から健康増進のための食事へ」という言葉が最も印象に残りました。限られた食料を多くの避難者に配給しなければならない避難所では,どうしてもエネルギー確保が最優先になります。しかし,避難生活が長期化し炭水化物中心の食事が続くと,口内炎や便秘など様々な健康問題が発生することが分かりました。身体面だけでなく,精神面でも食事は大きな影響を及ぼします。多くの方にこのことを知っていただき,非常食の購入や支援の際に役立てていただきたいと思いました。
 災害では必ず医療の力が必要になります。しかし,災害医療を専門的に調査研究している機関は少ないのが現状です。今回,防衛医科大学校にて災害医療に特化した調査研究ができ,非常に貴重な経験をさせていただいたいと関係各位に感謝致します。災害は決してなくなることはありません。今後も何らかの形で貢献してゆけたら幸いです。最後に,第63回大会長である志波直人先生,研究のご指導を賜った藤田先生,徳丸先生,所沢での生活を支えて下さった西田育弘先生(防衛医科大学校生理学講座教授)をはじめお世話になった諸先生方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 本研修は平成28年度大分大学学長戦略経費重点領域研究推進プロジェクトによる助成を受けて実施しました。