宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 55, 2020

ニュースレター

4. 第63回大会関連 (1)第63回大会を終えて
第63回日本宇宙航空環境医学会を開催して

志波 直人

久留米大学医学部整形外科学教室

 63回を迎える歴史ある日本宇宙航空環境医学会大会を,久留米大学筑水会館で2017年11月16,17,18日(16日は会議)の日程で開催しました。臨床講座の主催ということで,「宇宙医学と臨床医学の同時進行と相互フィードバック:宙陸両用を目指して」をメインテーマとして,一般演題と伴に,筋骨格系,栄養,睡眠,放射線障害,大規模災害,内耳・前庭・平衡のそれぞれのテーマでシンポジウムを企画しました。
 各シンポジウムでは,臨床で活躍する医師と,宇宙航空医学の専門家がそれぞれの専門分野をプレゼンテーションして,その後ディスカッションを行い,相互に理解を深めました。JAXA東京事務所,筑波宇宙センターと会場をSkypeで中継した栄養と放射線障害の二つのシンポジウムでは,あらかじめ送付いただいたスライド原稿を会場で映写しながらプレゼンテーション,ディスカッションを行いました。トラブル無く予定通りに実施することができ,経費削減にも繋がる汎用システムを用いた当該セッションの可能性を示すことができました。
 参加者には,医学部生,高校生も見受けられました。医学部学生によるセッションでは,事前の開催周知などの課題がありましたが,参加した学生には他では得られない貴重な経験となり,宇宙航空医学への理解を深め,関心を高めるものとなったと思います。若手の会では,メインテーマに呼応して「地上に還元できる宇宙医学研究の可能性」をテーマに,将来の宇宙医学を担う若手研究者たちによる討論が行われました。基調講演では,われわれが実施した国際宇宙ステーションでの宇宙飛行士を被験者とした実験の成果とともに,実験の様子など,できるだけ画像を示しながら実体験をお話させていただきました。学会終了後に実施した救命ヘリ見学会には30名を超える参加者があり,救急医療,災害医療への関心の高さを再認識しました。
 地方での開催ということでアクセスや宿泊でご不自由をおかけしたり運営上の至らぬ点もあったかと思いますが,心を込めて対応した大学教職員,開催に協力いただいた整形外科同門会に免じて,ご容赦いただければ幸いです。第64回は順天堂大学スポーツ健康科学部,和氣秀文会長の下,順天堂大学さくらキャンパスで開催予定であり,さらに多くの参加者が期待されます。
 最後に久留米大学での開催をご許可いただいた加地理事長はじめ執行部の先生方に心から感謝するとともに,日本宇宙航空環境医学会のますますの発展を心より祈念いたします。

病院15階のドクターヘリならびに同運用室,格納庫の見学会。