宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 53, 2020

ニュースレター

3. 各分科会だより (1)宇宙基地医学研究会
平成29年度宇宙基地医学研究会

大島  博

担当理事

 近年ポストISSに向けて惑星探査が検討されており,長期閉鎖環境での精神的サポートの構築が重要視されている。平成29年度の宇宙基地医学研究会は 9月1日(金)18:30〜20:30エムワイ会議室御茶ノ水 ルームDで,JAXA鈴木豪先生の企画で実施した。
 「閉鎖環境と精神心理」をテーマとして掲げ,陸上自衛隊部隊医学実験隊の山本泰輔隊長に特別講演1「陸上自衛隊における派遣任務でのストレス対策教育」を,自衛隊中央病院第2精神科部長の澤村岳人先生に特別講演2「海上自衛隊における閉鎖環境とメンタルヘルス」の2つの御講演が行われた。
 極限環境における自衛隊員の心理サポートを行っている山本氏は,陸上自衛隊の海外派遣で起こりやすいストレス反応と,人間関係の問題に関するストレス対処法を包括して説明され,事前教育,グループでの対処法,ミッション後の再適応などの重要性を強調された。
 澤村氏は,精神医学の基礎知識および生物学的な理論を踏まえ,実際の海上自衛隊におけるさまざまな閉鎖環境ストレス,特に潜水艦内環境および飽和潜水のメンタルヘルスに与える影響を紹介し,海上自衛隊任務と宇宙滞在とを比較しながら今後の長期閉鎖環境におけるメンタルヘルス対策について,ご講演いただいた。
 金曜日の夕方にも関わらず30名以上の聴講者が参加し,会場はほぼ満杯状態であった。活発な質疑応答も行われて盛会裏に研究会を終了した。