宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 50, 2020

ニュースレター

1. 理事会執行部からのあいさつ
学会執行部からのご挨拶

岩崎 賢一

日本宇宙航空環境医学会 庶務担当理事

 本学会は,宇宙や航空の環境因子,さらにはその他の様々な環境における医学に関して,臨床や研究などの活動を行なったり,興味を持ち勉強をしている学会員の方が多いと思います。その研究の内容も非常に多様であり,宇宙医学領域の研究だけ取り上げても以下のように様々な方向性があります。まず最も一般的なのが,現在の宇宙飛行士の宇宙飛行において発生している疾患や医学的問題に関して病態・機序を解明し,その対策について研究するものであります。例えば,宇宙酔いや,筋肉の萎縮,骨量の低下,循環系の変調,放射線影響に関しての研究領域が盛んです。そして次に,将来の宇宙探査への寄与を目指す研究領域も盛んです。将来の宇宙ミッションはより長期になることなどを考慮して,医学的な課題の対策として現在用いている運動トレーニングの内容等を改善したり,電気刺激器具など特殊な方法を併用することなどで,その有効性や効率を良くしようとする研究もあります。この領域ではさらに,回転により発生させる遠心力を重力の代わりにする人工重力の応用によって,より有効な対策方法を開発しようとする研究もあります。さらに,宇宙において将来行なわれるであろう処置や手術などに関しての研究もあります。例えば宇宙での使用に適した麻酔・手術の器具や方法の開発です。また,一般人の宇宙旅行が盛んになれば,病気を持った方が宇宙に行く機会も増えますし,法律的問題も多くなってくるかもしれません。そのことを見越した研究も行なわれています。逆に,病気の種類によっては宇宙での治療が適しているという場合も出てくるかもしれず,それらを検討する研究もあります。一方で,地上での一般医療への応用を目指して宇宙の特殊環境を活用しようという研究もありますし,これまでの宇宙医学研究の成果を土台に地上での医療への応用を検討するものもあります。
 この多様性こそが本学会の特徴であり,それをさらに拡充することが,将来本学会を担う若手研究者や医療従事者を増やしていくことに繋がるのだと考えています。学会の年次学術大会には,宇宙医学に興味をいだき参加する医学部生などもいます。そのような人たちが将来実際に当領域の活動を行ない本学会の会員として活躍することを切望いたしております。