宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 41, 2020

ニュースレター

3. 各委員会だより (1) 企画委員会
宇宙惑星居住科学連合が結成され,当学会も参加メンバーとなりました!

立花 正一

企画委員長

 今年から宇宙環境をテーマに研究活動を行っている5つの学術団体が「宇宙惑星居住科学連合」というグループを結成しました。お互いの情報交換や交流を活発にして,我が国の宇宙環境に関する研究を促進しようという趣旨だと考えています。将来的には名称が示しているように,惑星(火星?)への有人探査や居住を可能にする研究や技術開発も支援しようという野心が伺われます。
 参加団体は日本宇宙生物科学会,日本マイクログラビティ応用学会,日本宇宙放射線研究会,生態工学会,そして日本宇宙航空環境医学会の5団体です。当学会からは立花が運営委員として参加し,今のところはメールベースで連絡を取り合っております。来年1月16-17日に相模原のJAXA宇宙科学研究所(ISAS)で行われる宇宙環境利用シンポジウムの際に,運営委員会の初会合が行われる予定です。この連合の活動方針が次第に具体的になっていくことと期待されます。
 当学会の第62回大会は大会長岩瀬先生のお骨折りで,この科学連合のメンバーである日本宇宙生物科学会との合同開催が実現しました。今後この科学連合の活動が活発になれば,このような合同開催や各種研究会なども行われ,我が国の宇宙環境に関する研究活動が量的にも質的にも活性化されるのではないかと期待しているわけです。
 さて各国の政府レベルが関与する有人宇宙開発プログラムが国際宇宙ステーションISSですが,残念ながらポストISSについては,未だに明確なプログラムやシナリオは定まっていません。一方,民間レベルでは火星探査への意欲が旺盛で,米スペースX社が10年以内に火星に人間を送り込むという野心的な計画を発表したり,米ロッキード・マーチンが28年までに火星の上空を回る有人宇宙ステーションを建設する計画を発表したりしています。わが国でも,キャノンが宇宙ロケット事業への参入を発表したり,エイチ・アイ・エス(HIS)とANAホールディングスが宇宙船開発ベンチャーに出資することを発表するなど,民間の宇宙開発への意欲が盛んです。我々宇宙関連学会としても,このような機運に乗り遅れずに,専門家集団として積極的に関わることができるのではないでしょうか。この科学連合がそのような活動の足場となればうれしいことです。

 最後に加盟団体の概要をホームページから拾い上げてご紹介します。
 日本宇宙生物科学会:宇宙生物科学及びそれに関連する分野の学術研究を振興すると共に,会員相互及び国際的な連絡を図ることを目的としている。
 日本マイクログラビティ応用学会:宇宙や実験施設などで得られる微小重力環境を利用した流体科学,結晶成長,物理化学,材料科学,燃焼,生物科学など学際的研究分野の基礎科学および応用に関する研究交流,情報交換を目的としている。
 日本宇宙放射線研究会:宇宙放射線の人体と環境に与える影響およびこれに関する諸科学の進歩に寄与し,研究者の連絡と協力を図ることを目的としている。
 生態工学会:地球における人類の存続と生態系の維持,宇宙への進出も視野に入れた活動を行っている。