宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 37, 2020

ニュースレター

4. 特別寄稿 (2)研究奨励賞を受賞して

北島 明美

聖マリアンナ医科大学 耳鼻咽喉科, 北島耳鼻咽喉科医院

 この度はこの様な素晴らしい賞を賜り,誠に光栄に存じます。この場をお借りして,皆様方に深く感謝,御礼申し上げます。この学会で受賞していただけたことは,幼い頃より宇宙に憧れ,宇宙を目標としていた私にとっては,本当に特別なことで,感慨無量でございました。思えば,小学校の卒業文集に書いた「将来の夢」は「宇宙のことを研究する科学者になりたい」でした。
 私が本学会に入会させていただいたのは,医学部5年生の時でした。幼少時より宇宙に興味を持っておりましたので,宇宙医学に携ることのできるところを探しておりました。学会事務局に電話で問い合わせたところ,大変親切に,入会についてご説明して下さいました。今思えば,あのお優しい声は須藤先生だったと思います。早速,肥塚先生に推薦状をお願いして書いていただき,入会させていただきました。もともと,研究好きだった私は,医学部に入る前から基礎系に進もうかと考えておりましたが,医学を学ぶうちに臨床にも興味を持つようになり,そして宇宙医学にも同時に携れるようになりたいと切望し,進路先を模索致しました。一旦内科に所属しましたが,研修医を終了し,大学院に入る時点で耳鼻咽喉科へ入局し,その後は主に,「宇宙酔い」と関連の深い,偏垂直軸回転検査(OVAR)を用いた前庭の研究を続けさせて頂いております。研究して得られた結果は,日々の診療において,患者さんへの還元に繋がります。また,患者さんの訴えの中には,その時点では説明できない症状があったとしても,何一つ意味のないものはありません。不思議に思ったことは過去の文献を調べ,それでも分からない時は自分で研究し,答えを導き出します。この様に,患者さんから学ばせていただくことが多々あることにも医師,そして研究者になってから気づかされました。これまで様々な研究の機会を与えていただき,私を神経耳科医として育てて下さいました肥塚泉先生,動物実験を通して基礎研究の大切さを教えて下さいました故・内野善生先生に心から感謝申し上げます。
 我々の研究結果が,患者さんや,宇宙における滞在,地球帰還後のリハビリテーションに将来少しでもお役に立てますよう,今後も精進して参ります。今後ともご指導,ご鞭撻の程,宜しくお願い申し上げます。

聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科外来に設置のOVAR装置。