宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 36, 2020

ニュースレター

4. 特別寄稿 (1)第61回大会を終えて

津久井一平

一般財団法人 航空医学研究センター理事長

 平成27年11月19日から21日までの3日間,東京慈恵会医科大学において,第61回日本宇宙航空環境医学会大会を開催した。今回の主催者側が用意したテーマは,「空の安全,宇宙の安全」で,背景として,1)多職種連携の時代の医学と工学の協調,2)事故調査と安全文化の醸成の二点を考慮し,国土交通省と日本人間工学会及び慈恵産業医学の会の協賛を得た。基調講演には,交通安全に係る技術系の論客として名高い運輸安全委員会の遠藤信介氏をお招きし,事故に学ぶという視点で豊富な知識と経験をご披露頂き,航空機事故根絶に向けた取り組みの過去,現在,これからを展望して頂いた。特別講演二題では,宇宙旅行も現実となりつつある今,一般の方々にも向けた宇宙ステーションの宇宙飛行士を取り巻く環境と,定期航空利用者が年間30億人を超えた民間航空分野では,その医学的問題点を各々の専門家に概説して頂いた。
 更に,航空と宇宙の人に係る安全の問題を,シンポジウム二題に分けて6人の演者に論じて頂き,アップツウデートな話題提供を行った。
 平成28年は,健康と安全の統合の年ともいわれ,産業衛生でのISO45001の施行やオリンピック年を睨んだ交通政策基本計画の実施,医療分野での事故調査制度の運用開始など,時代的にわれわれ航空宇宙関係の医療人にとって,自負を持って世間に見解を発信すべき状況を向かえている。このような折,航空安全に携わってきた当職,当財団に,大会を主催させて頂く機会をお許し頂いた学会諸兄に心から感謝申し上げる。
 環境を冠して,航空医学,宇宙医学を標榜する伝統あるわが学会が,基礎,応用諸分野でさらなる発展を遂げることを期待して止まない。
 なお,一般演題は26,参加者は175名であった。詳細は,後日報告する。