宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 31, 2020

ニュースレター

5. 特別寄稿 (2)第60回大会に参加して

篠島 亜里

日本大学医学部 視覚科学系 メディカルレチナ学分野

 このたび,歴史ある『第60回日本宇宙航空環境医学大会』に参加させていただきましたので,その感想を述べさせていただきます。
 私は,中学時代に向井千秋先生のドキュメンタリー番組を見て以来,宇宙医学について興味を持ち,その熱が冷めないまま,もうかれこれ約20年の月日が流れました。大学院時代に,本大会の大会長である岩崎賢一教授の教室で,模擬微小重力環境の作り方や静水圧などを学ばせていただき,眼の網脈絡膜の断層像を非侵襲的に撮影できる光干渉断層計という器械を用いて,眼科学教室の湯澤美都子教授のご支援もあり,実験させていただく機会を得ることができました。
 それにより,急性期のヘッドダウンティルト30分後には,脈絡膜の肥厚に伴い網膜が前方移動することで,平均+1.3 diopterの遠視化が起こることを実験から明らかにし,論文化までさせていただくことができました。ちょうどその論文の投稿中に,宇宙飛行士の『Visual Impairment and Elevated Intracranial Pressure (VIIP)』の論文が出始め,宇宙における眼の変化が世界で話題になっているということを知りました。私も眼科医として,それの解明に微力でも携わりたいと考えるようになりました。
 第60回大会では,若手のためのシンポジウムが開催されるということを知り,宇宙飛行士のVIIPについての理解を深め,考察する良いチャンスだと思い,一般参加という形で,応募させていただき,発表させていただく機会を得ることができました。発表後,普段なかなかお会いできないような先生方からご質問やご意見をいただくチャンスに恵まれ,その後も考察を重ねることができ,学会という場の大切さを身に染みて感じました。さらに,宇宙飛行士の向井千秋先生,古川聡先生,大会長の岩崎賢一教授より,このたび,『若手優秀研究企画賞』を授与していただき,身に余る光栄でした。このシンポジウムをきっかけとして,宇宙飛行士のVIIPにまつわる研究に,さらに力を入れて行きたいと考えております。
 今回は,微力ながら日本大学の一員として,お世話になった衛生学教室のみなさんと一緒に,当日のスタッフとしてもお手伝いさせていただきました。学会を円滑にすすめる上での重要なことも学ぶことができ,私にとって特別なものになりました。
 今後も,宇宙医学に携わる先生方と一緒に,学会という場を通して,活発な議論をし,理解を深め,宇宙へ行く人の疾患の解明や予防につながれば良いと考えております。また,それにより明らかになったことが地上の医学にも還元されるとよいと思います。
 このたびは参加させていただき,本当にありがとうございました。