宇宙航空環境医学 Vol. 57, No. 2, 30, 2020

ニュースレター

5.　特別寄稿　（1）第60回大会を終えて

第60回日本宇宙航空環境医学会大会　大会会長　岩�普@賢一

日本大学医学部　社会医学系衛生学分野， 日本大学大学院　宇宙航空環境医学　教授

　このたび，平成26年11月28日（金）〜29日（土）に，東京の御茶ノ水駅前にありますソラシティにおきまして，日本宇宙航空環境医学会大会を日本大学医学部衛生学分野が主幹となり開催致しました。お蔭様で，宇宙滞在経験のある医師の向井千秋宇宙飛行士，古川聡宇宙飛行士の御両名にもご参加いただき，当学会の大会としては記録的な241名の参加者を得ました。公募演題も46演題が集まり，2つの特別講演もお願いして大変な盛会となりました。
　本学会の第一回学術大会は，1955年，日本航空医学心理学会総会として東京で開催されました。本年で60回の節目の大会を迎える伝統ある学会であります一方，宇宙医学の分野は，他の一般的な医学分野と比べれば，まだ歴史も浅く，その研究成果の蓄積や社会的な認知は十分とは言えません。そのため，学問の原点である研究の推進と，社会的な認知度を上げるための広報普及を，車の両輪としてバランスよく実施していくことが重要と思い，大会テーマを「宇宙医学の推進と普及」と致しました。
　この分野を推進し普及するためには，将来を担う若手研究者らに活発に活動してもらうことが不可欠です。そこで，向井千秋宇宙飛行士がセンター長を務められている「JAXA宇宙医学研究センター」と「宇宙航空環境医学若手の会」にも協力して頂き【シンポジウム:国際宇宙探査時代を想定した若手からの研究企画の提案】を実施致しました。8人の若手研究者・医師から研究企画の口頭発表をして頂きました。内容としては最近宇宙医学で話題の疾病に対する将来の予防に関する研究から，宇宙でも将来使用できる麻酔器の開発に関するものまで，非常に多彩なものでした。熱のこもった各演者の発表に対して，研究・臨床経験豊富な聴衆と活発な議論が交わされました。さらには，向井千秋先生，古川聡先生の御両名にも貴重なコメントとご講評を頂き，最後に「若手優秀研究企画賞」を授与しました。大会後に，シンポジストとなった若手研究者・医師の多くから，非常に貴重な機会を得てモチベーションが高まったとの意見を頂戴しました。
　また，「認定医制度10周年記念特別講演」として谷島一嘉日大名誉教授より，有人宇宙飛行の歴史をご講演頂き，これまでの有人宇宙開発に関し振り返り，そして田中哲夫JAXA執行役より特別講演で，将来の国際宇宙探査の方向性について拝聴し，有人宇宙開発の過去，現在，未来についての認識を深めました。
　参加いただいた皆様，ご支援いただいた団体の皆様，大会の運営に献身的に協力してくれた衛生学分野関係者のお蔭で，「宇宙医学の推進と普及」に貢献する実り多い大会になったと感謝を申し上げます。