宇宙航空環境医学 Vol. 56, No. 4, 87, 2019

シンポジウム2

負荷制御型トレッドミルによる歩行解析

伊藤 彰人1,2,3,辻内 伸好1,2,3,大内 陽2,廣瀬 圭3,4

1同志社大学理工学部 ・ 2研究科
3同志社大学宇宙医科学研究センター
4株式会社テック技販

Walking analysis using load-controlled treadmill

Akihito Ito1,2,3, Nobutaka Tsujiuchi1,2,3, Ouchi Yo2, Kiyoshi Hirose2,3

1Faculty and 2Graduate School of Science and Engineering, Doshisha University
3Research Center for Space and Medical Sciences, Doshisha University
4TecGihan Co. Ltd.

現在,日本では65歳以上の人口割合が25%以上を占める超高齢社会を迎えている。高齢化により生じる問題の一つとして,加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)などにより様々な運動器障害が生じることで,「立つ」「歩く」といった日常生活の動作が困難となり,要介護リスクが高まるロコモティブシンドロームが挙げられる。このロコモティブシンドロームによってQOL(Quality of Life)や健康寿命の低下が見られることから,ロコモティブシンドロームの予防や原因究明が喫緊の課題となっている。本研究では,ロコモティブシンドロームの原因の一つであり,加齢や疾患により筋肉量が減少することで,全身の筋力低下および身体機能の低下が起こるサルコペニアに着目した。サルコペニアが進行することで,歩行速度が低下したり転倒,転落したりするリスクが増え,それにより体を動かす機会が減り,さらにサルコペニアが進行するという悪循環に陥る可能性がある。サルコペニアの防止およびリハビリテーションでは,体重を支える抗重力筋に有効な刺激や負荷を与える必要がある。しかし,従来のトレッドミルでは,自動的に回転するベルト上を歩行,走行する装置であるため,抗重力筋に有効な刺激や負荷を与えることが難しい。そこで,抗重力筋であるヒラメ筋などの足首関節底屈筋を積極的に動かし,重力を支える抗重力筋に有効な刺激を与えるためには,自分自身で歩行面を蹴り出し,蹴り出す力に合わせて負荷を与えることのできる負荷制御型トレッドミルが必要となる。現在,筋肉の減弱防止および増強のために,負荷制御型トレッドミルを用いた歩行解析を行い,効果的に筋肉に刺激を与えられる負荷方法を考案することを目的に研究を進めている。そこで,本発表では,負荷制御型トレッドミルを用いた歩行解析結果を報告する。