宇宙航空環境医学 Vol. 56, No. 4, 70, 2019
一般演題4
22. 幼若ラットの管腔臓器に対する宇宙飛行の影響～Neurolab （STS-90）での組織解析から
三宅 将生1，山﨑 将生2，勝田 新一郎1，清水 強3，挾間 章博1
1福島県立医科大学 ・ 医学部 ・ 細胞統合生理学講座
2株式会社アルファーコーポレーション
3医療法人登誠会諏訪マタニティークリニック ・ 清水宇宙生理学研究所
Effects on hollow organs in neonatal rats by spaceflight ～ a tissue analysis in Neurolab （STS-90）
Masao Miyake1, Masao Yamasaki2, Shin-ichiro Katsuda1, Tsuyoshi Shimizu3, Akihiro Hazama1
1Department of Cellular and Integrative Physiology, Fukushima Medical University School of Medicine
2Alpha Corporation
3Shimizu Institute of Space Physiology, Suwa Maternity Clinic
我々はNeurolab （STS-90）において，生後9日齢および15日齢の幼若ラットをスペースシャトルにて打ち上げて軌道上で飼育する宇宙実験を行った際，様々な臓器の発達状態を重量比較し報告した。これを管腔臓器間で組織学的に比較したところ，小腸ではフライトの影響がほぼ見られなかったのに対し，尿管では内腔断面積が大きくなっており，さらには接続している腎臓にて水腎症を呈している個体もあった。この両器官の平滑筋は自発活動電位を発生して収縮を起こすことが知られており，そのペースメーカー細胞のマーカーとして知られるc-kitの発現を免疫染色にて比較した。微小重力環境は「無静水圧」「無浮力」「無対流」などで特徴づけられる。また，実際の宇宙空間での生活環境は「低生活加速度」であるとも言える。単一の臓器系で，こうした物理的特性の直接的な影響を受けやすいのは，管腔構造をもつ臓器だと考えられる。中でも，「より細長い（縦横比が極端）」「より直線的」「より剛性の高い」「より大型な」管腔をもつ臓器は，管腔内での物質輸送において重力に依存する比率が高く，微小重力環境のインパクトが大きい可能性がある。逆に，こうした特徴を持たない管腔では，蠕動や線毛運動の寄与が大きいものと想定しうるだろう。