宇宙航空環境医学 Vol. 56, No. 4, 57, 2019

一般演題2

9. 卵胞期における水中歩行運動が尿量に及ぼす影響

和田 拓真1,守田 瑞希2,野瀬 由佳3,吉岡 哲4,小野寺 昇1

1川崎医療福祉大学
2倉敷市総合福祉事業団
3安田女子大学
4関西福祉大学

Effects of water exercise on urine volume during the follicular phase

Takuma Wada1, Mizuki Morita2, Yuka Nose3, Akira Yoshioka4, Sho Onodera1

1Kawasaki University of Medical Welfare
2Kurashiki-shi General Welfare Corporation
3Yasuda Women’s University
4Kansai University of Social Welfare

【背景】 浸水時に生体は,水の物理的特性の影響を受け陸上とは異なる生理的反応を示す。浸水時は,浮力が影響し微少重力に近い環境である。水中運動は,浮力の作用によって関節への負担が軽減する運動として推奨されている。近年,水中運動の中でも,水中歩行は,有酸素性能力の向上のみならず筋力の向上が期待できることから,スポーツクラブなどで広く普及している。しかしながら,水中運動に関する教本等は,必ずしも排尿に対するアセスメントが記載されているとは限らない。排尿のタイミングの明確な指針の検討が必要であると考える。女性の尿アセスメントに関する報告はほとんど見当たらない。そこで,卵胞期における水中歩行時に生じる,尿量,尿比重,心拍数および主観的運動強度の変化を明らかにすることとした。
【方法】 対象者は,健康で月経異常のない女性6名であった。測定プロトコルは,座位安静を30分行った後,歩行運動を30分行った。その後,回復時に座位安静を30分行った。測定条件は,陸上条件および水中条件の2条件とした。水位は,剣状突起とした。水温は,30℃で行った。測定項目は,尿量,尿比重,心拍数および主観的運動強度であった。運動強度は,心拍数から算出した60%HRreserveとした。各条件を1回ずつ測定した。各条件は,別日に測定した。
【結果および考察】 水中条件の運動後における尿量は,陸上条件と比較して有意に高値を示した(p<0.05)。陸上条件の運動後における尿比重は,水中条件と比較して有意に高値を示した(p<0.05)。心拍数,主観的運動強度は両条件の間に有意な差がみられなかった。これらのことから,水中環境下においては,尿生成が亢進するものと考えられる。水中に留れば尿生成が亢進し,利尿作用が促進する。水中運動時は,運動強度が同じであれば陸上運動時と比較して,尿による体液損失が大きくなる。浸漬時の頭部への血流配分が刺激となり,腎血流量および心房性Na利尿ホルモンが増加し,血漿レニン活性およびアルドステロン濃度は低下する。以上の要因から,水中条件の尿量が増加したと考えられる。
【まとめ】 以下のことが明らかになった。1)卵胞期における水中歩行運動後の尿量は,陸上歩行運動後の約3.6倍になる。2)同強度の運動であれば,陸上運動時と比較して水中運動時に尿量が増加する。