宇宙航空環境医学 Vol. 56, No. 4, 56, 2019

一般演題2

8. ハイブリッドトレーニングシステム装置付属自転車エルゴメータの遂行性と生理的応答

大本 将之1,田川 善彦1,塚田 裕也1,戸次 将史1,名護 健1,松瀬 博夫1,志波 直人1,松尾 重明2

1久留米大学
2久留米工業大学

Physical response and performance of a bicycle ergometer attached with a Hybrid Training System device

Masayuki Omoto1, Yoshihiko Tagawa1, Yuuya Tsukada1, Masafumi Bekki1, Takeshi Nago1, Hiroo Matsuse1, Naoto Shiba1, Shigeaki Matsuo2

1Kurume University
2Kurume Institute of Technology

Hybrid Training System:HTSはセンサーにより関節運動を感知して随意運動に合わせて拮抗筋が電気刺激収縮し,主動筋の運動抵抗となる筋力トレーニング装置である。パラボリックフライトでエルゴメータとHTS を組み合わせて実験を行い,微小重力空間でも問題なく使用できることを検証した。HTS併用で座位型自転車こぎを3分間行い,その間,放物線飛行による1G→2G→μG→1Gの重力変化に晒された。HTS併用を計5回,通常の自転車こぎを計5回行った。心拍数は平均2.55拍,HTS併用が上昇した。酸素摂取量に有意差はなかったものの,電気刺激をかけても有酸素運動の妨げとはならなかった。クランク角度や電位は,2Gまたは微小重力であっても,適切なタイミングで刺激されていることが分かった。先行研究において,微小重力曝露で機能的残気量や換気量が低下するとの報告があるが,本実験での動脈血酸素飽和度に関しても,μG後の低下を認めた。地上でもほぼ同条件で実験を行った。酸素摂取量と心拍数ではHTSあり・なしで変化を認めなかった。これは3分間と短時間であり,差が出なった可能性が考えられる。動脈血酸素飽和度に関してはHTSあり・なし両実験で2%程の低下を認めた。クランク角度や,電位は2Gまたは微小重力と同様に,適切なタイミングで刺激されていた。実験プロトコール上,同装置の酸素摂取量変化については,定常状態となる前に微小重力に曝露され,時間も20秒程度と短く,正確な評価は難しかった。そこで,模擬微小重力下に再検証を行うため,重力の影響を軽減させる横向きのHTS装置付属側臥位型自転車エルゴメータを開発した。側臥位時の床側の下肢はローラーを取り付け,摩擦係数を少なくし,天井側の下肢へは上から紐をくくりつけ重力負荷を減らした。今後,座位型自転車エルゴメータと側臥位型自転車エルゴメータとの比較で研究対象者(健常者)を募り行う予定である。