宇宙航空環境医学 Vol. 56, No. 4, 55, 2019

一般演題1

7. “Getting sea legs”の検討―第2報

長谷川 達央

明石市民病院 耳鼻咽喉科

How can we get sea legs?―on the return voyage

Hasegawa Tatsuhisa

Dept. Otorhinolaryngology, Akashi City Hospital

前回当学会で我々は船舶の動揺する環境に対する人の適応(Getting Sea Legs)について航海初参加者に6日間の動揺環境暴露実験を行い発表した。今回,より長期的な適応変化について実験を行ったのでこれを報告する。今回は前回発表と同被験者に対して復路航海で船体の動揺と被験者の体動揺の同時計測を行った。健常被験者13名(男性13名;平均年齢36.2歳;全員長期航海2回目参加)に対し,船首方向を向いて足間40cmで直立し,2m前方の視標を固視してよろけないように立位を保つように指示して,1分間計測した。航海終盤の7日間測定した。船体の動揺と被験者の動揺の比を長期航海初参加である往路航海データと比較検討した。左右方向については往路実験後半の被験者体動揺/船体動揺1.07±0.11に対して今回の復路実験では1.10±0.09と有意差は見られなかった(P=0.25)。前後方向の被験者体動揺/船体動揺は往路の1.96±0.24に対して復路は1.77±0.22(P=0.03),鉛直方向は往路の1.08±0.03に対して復路は1.05±0.03(P=0.008)とともに有意に減少した。今回の結果から約1か月の航海2回で検討したところ,動揺に対する左右方向の安定性は航海開始から1週間程度で完成するのに対して,前後・鉛直方向の安定性は1週間以上かけて改善してくるということが分かった。