宇宙航空環境医学 Vol. 55, No. 1-4, 14, 2018

一般演題

8. 成田国際空港クリニック2015・16・17年度旅客患者の比較分析

赤沼 雅彦,松浦 直子

日本医科大学成田国際空港クリニック

Comparative Analysis of the Traveler Patient in Narita Airport Clinic among 2015, 2016 and 2017

Masahiko Akanuma, Naoko Matsuura

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

【背景及び方法】 日本人年間出国者数は1千7百万人前後でここ数年推移しているが,外国人入国者数は2015年1,969万人2016年2,322万人2017年2,743万人と著増している。また,2018年の上半期も1,589万人とその勢いは続いている。成田国際空港では2015年4月にLCCのための第3ターミナルが竣工し,国際線旅客は外国人旅客が増加し,2015年度2016年度2017年度で日本人国際線旅客は毎年3%増加であるが,外国人は毎年11%増加している。また,通過客は8%,17%前年比減少しており,国内線は5%,3%増加している。
 日本医科大学成田国際空港クリニックは空港内診療所として365日体制で診療し,通常診療は9時から17時(日・火・水・金・土)または18時(月・木曜日)まで,救急診療を17時または18時から翌朝9時まで実施。今回当クリニックにおける2015,2016,2017年度旅客患者について比較分析した。各年度総受診者数はそれぞれ12,519名,13,014名,13,455名中,旅客2,963名(23.7%),3,183名(24.5%),3,272名(24.3%)を対象とした。旅客を出発・到着にわけて外国人比率や疾患構成を到着旅客は地域別に分析した。
【結果】 2015年度,2016年度,2017年度を比較するとは総数・旅客とも僅かに患者数は増加していた。また,外国人患者は1,071名(8.6%)から1,011名(7.8%)と2016年度で減少したが,2017年度は1,156名(8.6%)と増加していた。
 旅客を出発・到着で分けて比較すると到着がそれぞれ1,939人,2,048人,2,096人と増加し,出発は1,109人から1,118人とほぼ同じであったが2017年度は1,190人と増加した。この外国人比率は出発が26.3%から22.6%に低下し2017年度で27.5%に増加した。到着が17.0%から13.8%に低下し,2017年度で14.7%に増加した。また,地域別到着ではその他のアジアと東アジアの外国人患者数が2016年度から減少していた。到着日本人旅客では2016年度増加し2017年度多少減少したのが,東アジア,その他のアジア,オセアニア太平洋州,北米であった。疾患別では呼吸器疾患が出発で2016年度のみ減少,到着で2016,2017年度が増加していた。また,出発の外傷は2016年度減少し,2017年度で著増しており,到着では年度毎に増加していた。感染症も到着で2016年度増加し2017年度わずかに減少した。その他でも出発が年度毎に増加していた。到着旅客患者地域別では呼吸器疾患の比率がヨーロッパで高く,年度の変化は少なかった。感染症はその他のアジアで比率が高く,特に2016年度増加し,2017年度はわずかに減少した。
【考察】 2016年度は外国人旅客が11%増加しているにもかかわらず,患者数は減少している。通過客は8%減少しており,外国人患者の減少は,通過客の減少によるところが多いと推定したが,2017年度は通過客の減少にも関わらず外国人患者は増加しており,今後経年的変化についても検討してゆく必要があると考える。旅客数増加と患者数増加は必ずしも平衡しない。地域毎の疾患種類の比率は例年ほぼ同様であると思われる。