宇宙航空環境医学 Vol. 54, No. 4, 97, 2017

学生セッション

3. 災害時の避難所の医薬品に関する考察

熊谷 純之介1,藤田 真敬2,徳丸 治3,高田 邦夫2,永井 紗恵子1,南川 容子1

1大分大学 医学部 医学科
2防衛医科大学校 防衛医学研究センター 異常環境衛生研究部門
3大分大学 福祉健康科学部 生理学

Pharmaceutical Logistics in Disaster

Junnosuke Kumatani1, Masanori Fujita2, Osamu Tokumaru3, Kunio Takada2, Saeko Nagai1, Yoko Minamikawa1

1Medical Student, School of Medicine, Oita University Faculty of Medicine, Japan
2Division of Environmental Medicine, National Defense Medical College Research Institute, National Defense Medical College, Japan
3Department of Physiology, Faculty of Welfare and Health Sciences, Oita University, Japan

【目 的】 わが国は様々な災害が多く,時に避難所での生活を余儀なくされる。薬局の業務は非常に煩雑である。これらの薬局業務を避難所で行う場合には,大きな苦労があるものと考える。避難所における医薬品に関する現状と課題を調査した。
 【方 法】 医学中央雑誌,Medline等の検索サイトを使用し,災害(disaster),避難所(evacuation center),医薬品(medication, drug, medicine)等の検索語を用いて調査した。
 【結果と考察】 急性,亜急性期の避難所の医薬品需要は,主にストレス症状に対するものであった。鎮咳・去痰薬,鎮痛薬,降圧薬,整腸薬・消化性潰瘍剤,緩下剤などが必要となる。これらに対応する医薬品リストは日本集団災害医学会,日本DMAT,日本薬剤師会等から公表されている。
 慢性疾患の定期処方を担う巡回診療や外来の再開には3〜5日を要する。普段から5日分以上の薬の確保が推奨される。服薬指導の強化も有効であろう。
 避難所において避難者の服薬歴を把握する必要があるが,現状では避難所における服薬歴を正確に行う方法が確立されていない。表に服薬歴の確認法を示す。服薬歴の確認には諸外国で既に確立しているICカードや電子クラウドシステムによる電子カルテ等が有用であるが,わが国では未整備で様々な課題を伴う。お薬手帳の所持率は低く,クラウドシステムは整備されていない。個人情報保護法の壁もある。
 【結 論】 避難所で必要な医薬品リストは支援計画の立案に有効であり,支援を行う側は周知する必要が有るものと考える。一方,慢性疾患の定期処方を行う巡回診療や外来の再開には3〜5日を要することから,普段の受診時には3〜5日以上の十分な余裕を持った受診を奨励する必要がある。避難所では,定期内服薬を確認するシステムの確立が必要と思われるが,インフラの整備や個人情報保護法の整理が必要と考える。また,避難所では同じ薬効でも異なる医薬品が配布される可能性があるため,避難所において服薬指導の強化が有効と感じた。このためには解決策として薬剤師の更なる派遣が有効と考える。