宇宙航空環境医学 Vol. 54, No. 4, 96, 2017

学生セッション

2. 災害時の避難所の食事に関する考察

南川 容子1,藤田 真敬2,徳丸 治3,高田 邦夫2,永井 紗恵子1,熊谷 純之介1

1大分大学 医学部 医学科
2防衛医科大学校 防衛医学研究センター 異常環境衛生研究部門
3大分大学 福祉健康科学部 生理学

Food and Nutrition in Disaster

Yoko Minamikawa1, Masanori Fujita2, Osamu Tokumaru3, Kunio Takada2, Saeko Nagai1, Junnosuke Kumatani1

1Medical Student, School of Medicine, Oita University Faculty of Medicine, Japan
2Division of Environmental Medicine, National Defense Medical College Research Institute, National Defense Medical College, Japan
3Department of Physiology, Faculty of Welfare and Health Sciences, Oita University, Japan

【目 的】 我が国においては自然災害が多い。災害時の避難所において,口内炎,便秘の訴えが多数報告されている。口内炎や便秘の原因にはストレスや衛生環境等様々なものがあるが,食事もその一つであり,十分な栄養の確保が避難所における重要課題である。
 災害時の避難所における食事について調査し医学的課題を考察した。
 【方 法】 医学中央雑誌,Medline等の検索サイトを使用し,災害(disaster),避難所(evacuation center),口内炎(aphthous stomatitis),便秘(astriction/constipation),食事(food)等の検索語を用いて国内外の文献等を調査した。
 【結果と考察】 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では,避難者や,派遣される自衛隊員に口内炎,便秘の多発が報告された。避難所の食事は炭水化物中心で,ビタミン・食物繊維の不足が指摘された。支援に赴いた自衛隊員の食事も乾パンや缶飯,レトルト食品が続きビタミン・食物繊維の不足が報道されている。
 熊本地震では,温かく栄養バランスのとれた食事の確保が図られていないとして,平成28年5月20日に内閣府から熊本県へ改善命令が出された。
 避難所における食事はおにぎり等の炭水化物が中心で野菜や果物が不足しており,ビタミンB,Cおよび食物繊維の供給は必要量の半分以下であった。一方塩分の供給は多く,不規則な生活やストレス下における災害関連高血圧の一因である可能性が示唆された。また,便秘,吐き気などの消化器症状,口内炎,糖尿病患者の血糖コントロール不良等の多くの医学的問題が栄養状態と関連している可能性が示唆された。米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)が便秘の予防,高い栄養価のためにシリアルの使用を推奨しており我が国でも推奨可能と思われる。口内炎や便秘の原因として,ビタミンや食物繊維の摂取が必要であると考えた。
 災害時の適切な栄養供給には避難所における「栄養評価」も必要と思われた。
 【結 論】 災害時の避難所においては食事の偏りから口内炎や便秘他,様々な体調不良が生じ得る。これらの予防のためには,① 避難所でビタミン・食物繊維が不足することを支援者に周知させる。② ビタミン・食物繊維が添加され,かつ糖分が少ないシリアルの配布を心がける。③ サプリメントを効果的に配布する。ことを推奨したい。