宇宙航空環境医学 Vol. 54, No. 4, 93, 2017

一般演題 B

11. 飛行機頭痛の頭部MRI所見

由比 文顕

福岡和白病院脳神経外科

MRI findings of airplane headache

Fumiaki Yuhi

Fukuokawajiro Hospital, Department of Neurosurgery

飛行機搭乗時(特に着陸時)に出現する飛行機頭痛は臨床家にはよく知られているが頭部MRI所見に主眼を置いた報告は少ない。今回福岡和白病院の関連施設である総合健診クリニックで経験した飛行機頭痛の頭部MRI所見について検討したので報告する。
 【対象】 対象は2015年1月より2017年7月までに経験した飛行機頭痛50例。2015年9月より同年11月7日までに当クリニックを受診し飛行機頭痛を訴えなかった408例をコントロール群とした。
 【結果】 1. 男33例,女17例であった。2. 頭痛出現時期は着陸時のみが46例,着陸時および離陸時が2例,上空に到達した時が2例であった。3. 副鼻腔炎を有したものは男33例中22例,女17例中3例であった。コントロール群では男230例中90例,女178例中31例であった。4. 副鼻腔炎が一番多かった部位は飛行機頭痛群では篩骨洞(44.7%),コントロール群では上顎洞(51.6%)であった。5. 前頭洞の拡大は飛行機頭痛群では男21.2%,女17.6%に,コントロール群では男0.9%,女1.1%に認めた。6. 遺残脳脊髄液腔は飛行機頭痛群では男33例中6例,女17例中2例計8例16%に認めた。コントロール群では男230例中6例,女178例中4例計10例2.4%に認めた。
 【小括】 飛行機頭痛を訴える者の頭部MRIの特徴としてコントロール群と比較し,副鼻腔炎が多い,副鼻腔炎の部位は篩骨洞に多い,前頭洞の拡大が多い,遺残脳脊髄液腔が多い,の四項目が挙げられた。
 【結論】 遺残脳脊髄液腔と飛行機頭痛の関連についての報告はなく,今後長期にわたる症例の集積が必要である。