宇宙航空環境医学 Vol. 54, No. 4, 89, 2017

一般演題 A

7. 荷重除去による骨格筋萎縮とその後の再成長に伴う筋核内ストレスタンパク質の変化

後藤 勝正

豊橋創造大学大学院健康科学研究科

Myonuclear stress proteins in response to hindlimb unloading-associated skeletal muscle atrophy followed by reloading

Katsumasa Goto

Graduate School of Health Sciences, Toyohashi SOZO University

国際宇宙ステーション滞在など無重量環境への曝露は,特に姿勢維持筋への機械的刺激が減少し,骨格筋は萎縮する。こうした骨格筋の適応変化には,細胞ストレスの関与が示唆されている。一般に,細胞はストレスを受けるとストレス応答の結果として熱ショックタンパク質70(HSP70)に代表されるストレスタンパク質の発現が誘導される。HSP70は分子シャペロンとして,ストレスにより変性したタンパクの修復や保護など細胞内恒常性の維持に働くと考えらえている。これまで,HSP70に関しては細胞内での働きのみ注目されてきたが,最近になって,ストレスに応じてHSP70を核内へ輸送するキャリアタンパクの存在が報告された。しかし,骨格筋筋核内HSP70の動態は不明である。そこで本研究では,骨格筋萎縮とその後の再成長に伴う筋核内HSP70の変化を明らかにすることを目的とした。生後10週齢の雄性マウス(C57BL/6J)に2週間の後肢懸垂(HS)を負荷した。2週間のHS終了後,一部のマウスのHSを解除してさらに2週間の飼育を継続し,萎縮筋を再成長させた。その結果,腓腹筋内側および足底筋の筋核内HPS70発現量にHSの影響は認めなかったが,萎縮後の再成長により筋核内HPS70発現量が有意に増加することが確認された。筋核内HPS70はストレスを受けた骨格筋細胞において遺伝子発現を維持するために機能しているのかもしれない。本研究の一部は日本学術振興会科学研究費(挑戦的萌芽:16K13022,基盤C:26350818),全日本コーヒー協会「研究助成」,日本私立学校振興・共済事業団「学術研究振興資金」および豊橋創造大学大学院健康科学研究科「先端研究」の助成を受けて実施された。