宇宙航空環境医学 Vol. 54, No. 4, 84, 2017

一般演題 A

2. 成田国際空港クリニック2015・16年度旅客患者の比較分析

赤沼 雅彦,松浦 直子

日本医科大学成田国際空港クリニック

Comparative Analysis of the Traveler Patient in Narita International Airport Clinic between 2015 and 2016

Masahiko Akanuma, Naoko Matsuura

Nippon Medical School Narita International Airport Clinic

【背景及び方法】 日本人の年間出国者数は1千7百万人前後でここ数年推移しているが,外国人入国者数は2015年1,969万人2016年2,322万人と著増している。また,2017年の上半期も1,334万人とその勢いは続いている。成田国際空港では2015年4月にLCCのための第3ターミナルが竣工し,国際線旅客は外国人旅客が増加し,2015年度から2016年度で日本人国際線旅客は3%増加であるが,外国人は11%増加している。また,通過客は8%減少しており,国内線旅客は5%増加している。
 日本医科大学成田国際空港クリニックは空港内診療所として365日体制で診療し,通常診療は9時から17時(日・火・水・金・土)または18時(月・木曜日)まで,救急診療を17時または18時から翌朝9時まで実施。今回当クリニックにおける2015,2016年度旅客患者について比較分析した。2015,2016年度総受診者数はそれぞれ12,519名,13,014名中,旅客は2,963名(23.7%),3,183名(24.5%)であり,これを対象とした。旅客を出発・到着にわけて外国人比率や疾患構成を到着旅客は地域別に分析した。
 【結果】 2015年度に比較し2016年度は総数・旅客とも僅かに患者数は増加していた。また,外国人患者は1,071名(8.6%)から1,011名(7.8%)で僅かに減少していた。
 旅客を出発・到着で分けて比較すると到着がそれぞれ1,939人から2,048人と増加し,出発は1,109人から1,118人とほぼ同じであった。この外国人比率は出発が26.3%から22.6%に低下し,到着が17.9%から13.8%に低下した。つまり,到着,出発とも日本人が増加し,外国人が減少していた。また,地域毎の到着旅客では全ての到着地域で日本人患者が増加していたが,到着外国人患者東アジアを除いて全ての地域で減少していた。東アジアのみで外国人患者が84人から86人へわずかに増加していた。2015年と2016年度の旅客疾患分類については到着の呼吸器疾患(416から474)と感染症(705から760)と外傷(214から232)がやや増加し,その他(390から363)がわずかに減少した。出発では消化器疾患(160から184)とその他(232から265)がやや増加し,呼吸器疾患(341から314)と外傷(163から134)がわずかに減少していた。以上の変動がみられたが,到着旅客の疾患分類はほぼ同様傾向と考えられた。到着旅客患者の地域別疾患分類では他アジアで感染症が316から385人と増加し,東アジアで116から92人と減少した。その他は他アジアで114から84人に減少した。呼吸器疾患は東アジアで58から73人へ増加し,北米で65から78人へ,オセアニア太平洋州で51から64人へ増加していた。また,外傷はヨーロッパでわずかに減少し,その他の地域では増加していた。地域別疾患分類も変動はみられるものの同様傾向と考えられた。
 【考察】 外国人旅客が11%増加しているにもかかわらず,患者数は減少している。通過客は8%減少しており,外国人患者の減少は,乗り継ぎ客の減少によるところが多いと推定している。日本人旅客患者の増加は国内線旅客の増加と今回微増した国際線旅客によると考えるが,今後経年的変化についても検討してゆく必要があると考える。