宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 127, 2016

一般演題

「加速度・他」

3. 前庭(耳石器)機能代行デバイスによる姿勢認知と制御

山中 敏彰,松村 八千代,村井 孝行,和田 佳郎,北原 糺

奈良県立医科大学 めまいセンター/耳鼻咽喉・頭頸部外科

【緒言】 前庭からの情報入力が遮断されると,ヒトの平衡機能は著しく低下し,姿勢保持や制御が困難となる。今回,前庭覚に代わる感覚(舌触覚)を通じてバランス情報を伝達することを目的に開発された前庭(耳石機能)代行デバイスを用いて平衡機能の向上を試みたので報告する。
 【対象と方法】 姿勢・歩行障害が慢性化した11例を対象にした。頭位の傾きを感知する加速度計(重力センサー)を搭載した微小電極アレイを舌に設置することにより,傾き情報を電気信号で舌の触覚に与えて,それがセンターリングされるようにバランストレーニングを施行した。治療評価には,バランス支障度を表すDizziness Handicap Inventory (DHI)と歩行機能を調べるfunctional gait assessments (FGA)を用いた。
 【結果】 8週間の治療を行うと,全例,姿勢を認知して制御することが可能となりバランスパフォーマンスは著しく向上した。DHIとFGAの平均値は,治療前後でそれぞれ26.1と10.1ポイント改善した。
 【結論】 前庭(耳石器)機能代行デバイスは,平衡情報を代替入力して姿勢を認知・制御させることのできる新しい治療モダリティーとして期待される。