宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 119, 2016

一般演題

「重力・水浸」

1. 微小重力環境によるラットの活動量リズム変化を遠心重力を用いて抑制する

太治野 純一1,伊藤 明良1,長井 桃子2,張 項凱1,山口 将希1,3,飯島 弘貴1,3,喜屋 武弥1,青山 朋樹1,黒木 裕士1

1京都大学大学院 医学研究科
2京都大学大学院 医学研究科附属先天異常標本解析センター
3日本学術振興会特別研究員

微小重力環境による生体の変化を遠心重力によって抑制する試みは多くみられるが,活動量の日内変動に注目したものは少数である。本研究では微小重力環境によって惹起されるラットの活動量リズム変化に対し遠心重力介入を実施し,至適介入強度および介入持続時間を検討した。
 Wistarラットを尾部懸垂によって2週間の疑似微小重力環境に置き,介入期間中に遠心重力機による各強度・持続時間の荷重介入を実施した。グループは1) 対照群,2)持続免荷(UL)群,3)1時間/日免荷解除(1 G)群,4)1.5 G 80分/日遠心重力(1.5 G)群,5)2.5 G 48分/日遠心重力(2.5 G)群とした。活動量計測には埋め込み式のプローブを利用した。
 UL群,1 G群,2.5 G群には1.5 G群および対照群と比較して著明なリズムの乱れが認められ,特に日中(休眠期)の活動量に著明な差を認めた。尾部懸垂終了2週間後にはこれらの差は縮小したが,フーリエ変換による周波数解析の結果,対照群レベルにまで回復していたのは1.5 G群のみであった。
 活動量変化に対する遠心重力介入には,一定の至適範囲が存在することが示唆された。