宇宙航空環境医学 Vol. 53, No. 4, 115, 2016

宇宙航空環境医学会若手の会

「宇宙旅行 〜私も宇宙に行けますか?」(公開講座)

2. 宇宙旅行最前線〜宇宙旅行を取り巻く動き(世界,日本)〜

緒川 修治

PDエアロスペース株式会社 代表取締役社長

The forefront of space tourism─in the world and Japan─

Shuji Ogawa

President of PD Aero Space, LTD.

これまで「宇宙」は,国家主導による研究開発を目的としての対象であったが,今や民間がビジネスの対象として取り扱う時代となりつつある。ここにおいては「宇宙開発」という表現は適切ではなく,「宇宙事業/宇宙ビジネス」が妥当である。殊に米国を中心とした民間の新しい動きや試みは,恐ろしく挑戦的かつダイナミックであり,取り扱う対象も,従来の人工衛星の輸送/軌道投入から,宇宙ステーションへの人員や物資輸送,宇宙ホテルの建設,果ては,惑星からの資源採掘と様々な展開を見せており,つい先日も,火星移住100万人という途方もない計画が打ち出された。こうした宇宙ビジネスの展開に向けて,自社で独自に宇宙船/ロケットを開発している企業は1社や2社ではなく,数十社にのぼり,その機体様式も変化に富んでいる。
 一方,日本においては,国土の狭さや行政の対応,起業や投資マインドを含めた国民性の違い等により,大きく遅れをとっているのが現状である。宇宙ビジネスは,幅広い領域に関連するものの,実際に事業を行うプレーヤーが少ないのも我が国の課題の一つである。
 「宇宙旅行」は,宇宙ビジネスの対象の一つに過ぎない。しかし,これまでの宇宙開発には無かったセグメントして特異性があり,産業的価値も大きい。(新市場が創出されることになる)。一方で,一口に「宇宙旅行」といっても,機体様式や飛行形態によって得られる体験が異なる。そもそも「宇宙旅行」とは何を指しているかも曖昧である。
 本会では,民間宇宙,特に輸送分野(ロケット分野)における世界および日本の動きを紹介すると共に,輸送系宇宙ベンチャーとして弊社が取り組んでいる宇宙機の開発と,宇宙旅行をはじめとする関連事業の最新状況をお伝えする。これにより,宇宙ビジネスに対する理解を深めて頂き,今後自身の持ち場,立場で,「宇宙旅行」実現に向けて,今,自身が何をすべきか?を考えるきっかけとして頂きたい。